第18話

『Monster Hand Live』に銃や車などの近代兵器は無い。

大剣や弓などの原始的な武器で巨大なモンスターに立ち向かうシンプルだが完成度が高いゲームである。防具も防御特化の鉱石製装備や運動性特化の革製装備、バランスタイプの混合装備の3種類がありそれぞれ同じ素材を必要とするのだが発動するスキルが違うので作るのが楽しいと評判である。

プレイヤーは『ハンター』と言われるモンスターを狩るのが役目の人物になりモンスターと戦うのだがそれにはハンター協会に登録する必要がある。

ゲームの開始時にはプレイヤーはもうハンター協会に所属している設定なのでこの設定はゲームの設定集などに詳しく書いてあるので説明は省くが、その設定集の中に『探索者』と言う設定がある。

『探索者』の役目は簡単に説明すると『ハンター』が狩る予定の土地に先に入り、どんな様子か確認してハンター協会に報告するという役目の人の事でありハンター協会の重要な役職として認知されているという設定である。

その『探索者』の装備はきちんと3種類あり今回作ったのは革製防具の方の防具である。

『探索者』の装備は共通で防御を必要最低限にして運動性と動く時の音をなるべく減らした遮音性が特徴の装備でこの装備はその中でもデザイン性もかっこよくファンも多い防具になっている。


(ま、ゲームみたいに着ればスキルが発動するってわけでもないから完全に自分の趣味なんだけどね…)


因みに他の探索者装備一式の外観は鉄製装備なら安っぽい鎧一式に羽が付いたバケツヘルム、混合装備なら顔を隠すガスマスク風のマスクで上半身裸の上に鉄の胸当てにニッカポッカとブーツと他は見た目が結構ひどい。マジでこの装備だけデザイン性がいいのだ、動きやすいし。


「おっと、このまま出入り口で突っ立っていると邪魔になるな。いくか」


そう言うと俺は暖簾をくぐる。決して近くにいた人の視線に耐えられなくなったわけではない、ホントダヨ…


~銀座駅 ダンジョン前広場~


『俺、ジョブが『戦士』です!盾役をしますので誰かパーティーを組みませんか!?』


『私たちは中層まで進んだパーティなんですが私たちのパーティーに空きが出来たので良かった是非…』


『解体役募集!!安全地帯まで護衛するので誰か解体してくれる人はいませんか!?』


『皆さん、こんにちわ!今日から配信をしていく撲殺系美少女配し…』


ダンジョン前の広場はさすがに非日常の光景が広がっている、それにかなりの人が多い。

皮鎧と鉄パイプを装備した中年男性が解体役を募集していたり全身フルプレートにタワーシールドと槍の人がスーツと片手剣だけの人に勧誘を受けていたり、ゴスロリ風の完全に防御力皆無の服にモーニングスターを装備した同い年くらいの女性がドローンで配信をしていたり紫色のジャージにボロボロのカイトシールドとカットラスを装備した男性が叫んでいたりしている。


(おうおう、まるでゲームのオンラインの集会所みたいな感じだな…懐かしい…)


俺はそう思いながら購買を探す、そして壁際にその店を発見した。


「すみません、通してください…すみません…すみません…」


俺は何とか人込みをかき分けて進む。鎧を着ている分堅いからかき分けるのが大変だったか何とかかき分けて購買の前にきた。


(見た目は完全に駅の売店と同じだな…売り物は物騒だが)


俺はそう思いながら煙玉とロープの間にあるラミネート加工された小さい雑誌と個装されたブロック状の物を取る。


「すみません、これ下さい」


「はい、地図が一点と携帯食料が一点で合計1580円です」


「電子マネーで」


「はい」


ピロリンっと差し出したスマホが鳴る。

地図が購買に売られているのなら買うしかない、特に初見の場所に行くならこの情報はあるのとないのとでは雲泥の差が出る、情報とはそういう者だ。後ブロック状の携帯食料を買ったのも購買の食料の味も調べたかったからである。


(さて、地図をきちんと見てから行くか…)


俺は携帯食料をポーチにしまい、そのまま購買の隣の壁際に体を寄せ地図を凝視する。このサイズの地図なら数分くらいで俺の『地図』のスキルに記憶できる。…ん?なら何で立ち読みしないかって?…購買の回転が悪くなるから立ち読みはしない、もしかしたらそれで絡まれたりしたら最悪だからな。だからきちんと買ってから読む、これが大事。みんなも立ち読みはやめような、立ち読みダメ絶対。


~数分後~


俺はきちんと地図を頭に入れて地図をポーチにしまう。地図には帰還できるポータルの場所や主に生息しているモンスターの詳細も書いてあったので以外と有意義な情報だった。

そして今俺の前にダンジョンの入り口である黒い板が目の前にある。


「さて…気を引き締めますか!」


今回はお試し、自分の実力と道具の性能を確かめるのが目的だ。でも死ぬリスクはある、油断はできない。


「…」


俺は表情を硬くしながら板に触れる。そして触れた瞬間、謎の浮遊感が俺を包んだ。


~銀座駅ダンジョン~


頬をなでる風にいつの間にか目をつぶっていた事を理解した俺は目を開ける。


「……ッ」


どこまでも広がっている丘、しかし山もあれば森や竹林もある。そして周りの光景はさっきまでいた銀座駅の中とは違い何処を見ても開放的で絶景で美しい。

だから俺は目に入った光景に感動を隠せないでいた。

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