第15話

現在の日本はジョブやスキルなどを見て結婚する人がいるとは前にも言っただろう。

そのため現在、国内だけ見ても15歳以下でダンジョンで戦闘が可能とされているジョブとスキルを持っている人が約七割を越した。

ゆえに政府は優秀なジョブやスキル持ちの子供に戦闘経験をつませるために以前からダンジョンに入るための年齢制限を引き下げる法案を提出していた。

しかし中学生に危険なダンジョンに放り込むのはどうしたものかと色々と談義していたのだが去年の夏に法案が可決、本来高校生からダンジョンに入る許可が降りる所を中学一年から入れるようになった。しかしその為に中学の学科を変更せざるを得なくなった。

まず入学時に中学校とギルドにダンジョンの出入り許可の申請を通す、そしてその後の体力テストなどで審査が通ったら次に学科の一部が戦闘訓練に変更される。

その訓練を夏休みの三日前まで行い、その後に学校からもらえる戦闘訓練終了証明書とプレートをギルドに提出、すると三日後にクレジットカードサイズまで加工されたプレートとダンジョン許可証のカードが入った折りたたみ手帳とダンジョン装備専用のアタッシュケースが自宅に送られてくるというシステムである。

これをしないとダンジョンには出入りはできないしもし入ってしまったら学生であっても最低で懲役五年未満の実刑がくだるという感じだ。


「渉、確かにお前は俺たちよりも頭一つ抜いているよ。

正直今でもお前が戦闘系のジョブやスキルを持っていないのが不思議でならない、だけどダンジョンで通じるかば話が別だ。もしかしたらお前が死ぬ可能性だって…」


「叶」


俺は叶の言葉を遮る。

叶の言いたい事は十分に理解できるし死ぬ可能性もゼロじゃ無いことも十分承知だ、そして叶は善意で俺を止めようとしてくれているのも理解できる。だからこそ言いたい。


「叶、俺にはダンジョンでやりたい事…いや、やらなければならない事があるんだ」


「…」


叶が真剣な顔で俺を見てくる、確かに俺には戦闘系に補助がかかるジョブじゃ無いしそんなスキルもない。あるのは自前の筋肉と少しの戦闘訓練、あと前世でやりこんだ狩りゲーで鍛えた判断力と直感くらいだ。

だけど…


「それがどれほど危険な事か父さんにも口酸っぱく言われたよ。だけど俺のやりたい事はダンジョンでしか叶わない。

だったらダンジョンに行く、そしてモンスターを狩る。だから止まるつもりも無いし止めようもんなら引きずってでも俺は行くよ」


「渉、お前…」


「だって…」


俺は叶の顔をしっかり見る。そして、


「俺の夢を叶えたいんだ」


真顔でそう宣言した。


〜8月 7日〜


「うし、これでOK」


叶に宣言して数日、俺はこの日のためにキチンと夏休みの課題を終わらした。

そして今、送られて来たアタッシュケースに自作の装備と道具を詰めてフタを閉める。

いよいよ今日、俺はダンジョンに挑む。


「まずは銀座のギルド系列のビルで入るダンジョンの申請してからだよな、行くダンジョンも小規模ダンジョンだし大丈夫だろう」


俺は子供の頃に気が付かなかった事だがダンジョンにはまれに小規模ダンジョンと言われるものがある。

広さは普通のダンジョンと変わらないが浅層、つまり一層しかないダンジョンを総じて小規模ダンジョンと言われている。

この小規模ダンジョンは初心者向けとされ帰還ポータルも普通のダンジョンより多くあるそうだ。

但しモンスターの強さは変わらずなので初心者向けと言われているが死ぬリスクは変わらない。

今回はそんなダンジョンに行く。場所は銀座駅内にあるダンジョン、申請している時間を考えると昼前くらいには到着予定だ。


「んじゃ、行きますか」


俺はそう言うと家を出た


〜ギルド系列ビル 個室〜


「あの、渉さん。ダンジョン舐めてませんか?」


現在俺はダンジョンの申請を行うために個室で装備の入ったアタッシュケースを開けて中身を見せている。

但し装備を確認していた職員の女性は顔が渋くなっている。


「いえ、舐めていません。もしかして何かまずい物でも入っていましたか?」


俺がそう言うと職員は困った顔を俺に向ける。


「いや、網目の細かいアルミ製の鎖帷子と厚地で肘の所にプロテクターがついたロングコートにTシャツにジーパンにブーツ、後ゴーグルまでは大丈夫ですよ。持ち込まれるアイテムの申請も解体用ナイフに麦茶の入ったスキットルに自作の閃光玉で問題ありません。ですが…」


職員はそう言いながらアタッシュケースの武器に指を指す。


「いくら武器を買えなかったからと言って廃品で作るのはちょっと…」


そこにあったのはナックルガードがついたハチェットもどきが2本。


「なんだ、武器がどうしましたか?別に廃品では作ってませんが?」


俺が真顔でそう言うと職員は更に顔を渋くする。


「いえ、見間違いじゃなければ本来斧の刃ある部分が丸鋸の刃になってますし全体的に機械っぽいんですが…」


そう、これこそ『people's redemption』の三つの初期武器であるうちの一つ、双斧の武器であるチョッパーである。



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