第12話

『見てください、空がめちくちゃ暗いです!それに見える限り岩肌だらけの地面しか見えません!モンスターの姿も無しです!!』


テレビに映るフルプレートの男はスマホ付きのドローンに向かって現状を説明していく。


「ダンジョン配信者か…」


この世界の動画サイトであるD&Vにて高視聴率を取れる配信といえばダンジョン配信と言われている。

スキルやジョブの噛み合いが悪くダンジョンに入れない人やダンジョンに憧れる子供、引退した老人や暇つぶしに見ている大人まで幅広く需要があるコンテンツだ。

モンスターの鬼気迫る迫力や普段見られない絶景、宝箱から出るお宝などマンネリ化が起きないので配信する人が多いと聞いたことがある。

それにあのドローンもダンジョン配信専用に企業が開発した物だ。

下の部分にあるスマホを固定する部分に置くと内蔵された複数の魚眼レンズとマイクとスピーカーと専用アプリが起動、配信映像は内蔵された魚眼レンズが自動で行いスマホでは配信のコメントが確認できるしアプリにあらかじめ本人の装備や武器などを特徴を登録しておけばコントローラ無しで自動追尾してくれる仕様になっているみたいだ、つまり変態技術の塊である。

何で知っているかって?ネットで調べればアプリの仕様は教えてくるしドローンの機能も廃品の中に壊れたドローンがあったから中身のベアリングと魚眼レンズ目当てに回収したついでに調べたんだ。

マジで前の世界よりドローン技術が発達しすぎてびっくりした、何だよバッテリーが85グラムしかないのに配信機能使用時は最大17時間連続仕様が出来るとかバケモンじゃん。しかもスマホの固定する部分にはワイヤレス充電付きだしアプリで設定すれば自動音声でコメントを読んでくれるわ、ネットで調べたら自動で障害物を検知して回避するし配信者との距離も自動で計算して追尾するし、充電は5時間でフル充電だしそれでいて値段は安いやつで税込み9800円だし、本気で気持ち悪いほどに高性能の塊だ。

前の世界の人たちに必要な物詰め込みすぎだろ、どうなってんねん。


『見ていてください!今日、俺は伝説になります!!』


俺がドローンについて思いにふけっていたら、男はドローンを正面に移動させてから大振りなリアクションで叫んでいた。おいおい…


「あいつ死んだわ……浮かれる気持ちははわかるが他の禁層の映像を見ていないのか?大声を出すとか自分の居場所を教えてるようなもんじゃん……」


禁層で居場所を教えるという事はつまり…


ヒュー


『では!伝説をつく……ん?なんのおっ』


グシャッ


男が言葉を言い終わる前に突然真上から落ちてきたのか巨大な黒い杭みたいな物が落ちていて男を潰した。そして…


・・・ゴロゴロゴロ・・・


ドガガガガガガガガガガガガン!


何発もの雷が杭に落ち、その衝撃にドローンが壊れる。


…ジジ…


~♪~♪


その後直ぐに画面に砂嵐が起こり直ぐ晴れる。しかし映ったのは先ほどまで流れていた番組だ。


「おそらく3分くらいかな……やっぱ容赦ないわ禁層、明らかにオーバーキルじゃん」


俺はそう言うと魔石を砕いていた機械から音がしなくなっているのに気が付いた。


「お、出来たかな?」


椅子から立ち上がり機械に向かって歩き始める、しかし頭は先ほどの映像で一杯だった。

なぜダンジョンの禁層がTVを放送ジャックしてまで放送されたのか、なぜ配信者と撮影ドローンが写っていたのか、一体だれがこの現象をしたのか、俺は…いや俺を含めたこの世界の全ての人が知っている。

この配信をした物の正体、それは……


「グロ映像を加工無しで放送とか……『ダンジョン』はもう少し考えて放送すればいいんだけどなー」


そう、放送しているのは禁層に到着した者が入っていたダンジョン自体。

これこそこの世界にあるダンジョンの最大の特徴である電波ジャックによる禁層の放送、通称『闘技放送』である。

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