第10話

この世界には依頼というものがある。

この依頼はギルドのホームページで受けることができ、割と金策になると依頼をやる人も多い。これで生計を立てている人もいるくらいだ。

主にモンスターの素材やダンジョンでしか自生していない植物やキノコ類の納品、変わり種で地形調査や水質調査や要人の護衛などがあるらしい。

その中で企業などがモンスターの死体そのままを要求してくる依頼があり、その場合ギルドを通して一般の人がダンジョンでモンスターを狩り帰還用ポータルのある安全地帯まで死体を運んでそのまま帰還。

その死体をギルドが回収して病原菌などの検査を経てを企業に渡すという流れで企業がモンスターを手にいれるのだ。

企業は必要な素材を確実に手に入れるためこの依頼をするらしく、死体の受け取り後にお抱えの解体師に解体をしてもらうのだ。

だが、この解体自体に問題がある。

ダンジョンなら安全地帯まで運んでその場で解体すれば友好的なモンスターたちが解体時にでた不要な物を食べてくれるし血もダンジョンの植物の栄養になるためそこまで気にしない。

だが死体をそのまま持ってきた場合は話が違う。もし地上で解体した場合、不要な部分の処理が不十分だった場合例えばそれを食べたカラスやネズミなどが異常繁殖&狂暴化してしまうらしい。血も同様に処理を怠った場合の汚染がヤバいと聞いたことがあるが実際の所はわからない。

そのため専用の容器に入れ専門業者に依頼して処理してもらう必要があるわけだがかなりお金がかかる。

なのでそれをケチって企業がそのまま山や林に捨てる場合や高い費用に目を付けた悪徳業者が格安の値段で受け不法投棄する場合がなどがある。

これは俺がネットの掲示板で調べた情報でありもっと根深い物だと思うのだが首を突っ込むべきではない、地雷原でブレイクダンスをするみたいに命がいくらあっても足らないと思うからだ。


「それが見る限り10缶以上……どんだけ費用が浮いたんだか……」


俺はそう言いながらいそいそと山と積まれたドラム缶を次々と収納していく。なぜなら…


「ま、俺にとっては原油みたいなもんだし儲け儲け」


実はこの血は俺の持っている薬や罠や道具などのレシピの材料であり『people's redemption』の防具の制作に必要な素材の為いくらあっても困らない。前に回収したドラム缶には約48リットル位しか手に入らなかったので是非ほしいと思っていたのだ。


「血があるなら多分あれも…」


俺がそう言いながらドラム缶を収納していくと同じ柄で同じく三角のシールに『魔石の為取り扱い注意』と書かれたシールが貼られた鉄製の箱が出てきたのだ。


「ビンゴ!やっぱりあった!!」


俺はそう言うとと素早く回収する。

魔石はモンスターの体内から出たり出なかったりする水晶みたいな六角柱状の物体で正直今の社会では価値のない物でありこうやって箱に入れて処分するのが一般的だ。

しかし俺にとっては喉から手がでるほど欲しかった物だ。

何故ならこれは俺が持つすべての武器と防具に必要であり、もはやこれなしでは狩りゲーの道具の再現ができないのだ。

しかも薬もコレを要求するためマジでメチヤクチャ使うのだが前回は7キロくらいしか手に入らず泣く泣く全ての魔石を製薬練習のために使う分しかなかった。だが今回は…


「まさかの5箱もあるな、ざっと見45キロくらいはあるだろうな」


これだけあればとうとう狩りの為の武器や防具の制作練習が出来るかもしれない。俺はそう思いながら次々と素材を回収していった。


~次の日の朝~


政府の役員や重装備をした自衛隊の小隊、防護服とガスマスクを付けた数名の人たちが車でとある山の山道をのぼる。

この人たちは先日摘発した企業がモンスターの廃品を違法投棄したとされる場所に向かっていたのだ。もしかしたら野生動物が廃棄物で狂暴化している場合を考えて自衛隊の護衛も携えてひたすら山道を登る。しかし…


「何だ…これは?」


政府の役員が呟く、何故なら不法投棄したとされるポイントには廃棄物が一つもない。それに不自然なくらい周りのゴミも一つもない、だが周りの草や地面が変な形で潰れているため昨日まで廃棄物があったのは間違いないのだ。


「一体何があったんだ?」


流石の状況にその場の全ての人が困惑した。その後役員の指示で一応検査などをしてその日の夕方にはその場を撤退した。

その後この事は『OO山特定危険廃棄物紛失事件』として調査されたのだか何も見つからなかったため半迷宮入りをしていく。

そして何が起こったのかは数年後にまさかの結果で判明するのであった。

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