第9話
『ねえ奥さん、知ってます?』
『何々?何の話?』
『違法なゴミの回収業者の車がこの前夜中に〇〇川の河川敷に回収したゴミを捨てている所を見たって人が居るんですって』
『いやーね、○〇川って近くじゃない』
『そーなのよ、いやーね本当に』
『ほんとほんと』
のちに天啓となる奥様達の立ち話が聞こえたのは俺が道具作成のための材料を探して約7か月くらいに父さんと一緒に買い物をしていた時に突然聞こえてきた。
噂程度の話だったが○〇川は俺の住んでいるマンションの隣だったので俺は確認のためその後に歩いて噂の不法投棄を探した。
結論から言うと噂は本当だった、自転車や台所のシンクやらポリタンクやら色々なゴミが捨てられていたのだ。犯人は後日現行犯で巡回中のパトカーに見つかり逮捕されたらしいがその日の廃棄物しかなくその日以前の廃棄物はきれいさっぱり無くなっていて警察も混乱したらしい。
はい、全部回収しましたが何か?だってもったいないじゃん、タダだし。
「ヒャッハー!!宝の山じゃー!!!」
俺はその後不法投棄のゴミを中心に材料回収を開始した。回収したゴミをスキルで資材にしてから不慣れながらも前世の下町の鉄工場の経験を活かしつつ失敗を繰り返して道具制作の練習をしながら様々な物を作っていった。
そのためこの五年間で奥様方の噂話やネットの掲示板からそういう話などを中心に情報収集をしてランニングがてらの廃品回収という名の材料集めに奔走、そして1年前の誕生日にスマホと自転車を貰い更に行動範囲を広げながら効率よく回収できるようになり現在夏休みだから少し遠出して今に至るわけです。
「お宝回収~♪お宝回収~♪」
俺がそう言いながらゴム手袋と紙マスクを付けて中身の分からない液体の入ったガラス瓶に触る、すると瓶が霞のごとく消えた。
「いやー拠点様様だねー♪」
そう、最初の回収の際に拠点に壊れた電子レンジを入れた途端電子レンジが消えた。一瞬の出来事に意識が持っていかれていたら4つあった扉の最後の扉が光り、何故か扉がシャッターになっていた。シャッターには達筆な字で(解体場 分解 資材管理)と書かれていてシャッターの中には分解されて部品別に分かれている電子レンジの部品たちが棚に置かれていた。
その後拠点から出て他の廃品を回収しようと触ったら霞のごとく消えたのだ。
そして去年にスマホを手に入れた時の回収時に何故か通知がなった。
「まさか自動で回収と分解をしてくれるだけじゃなく仕分けまでしてくれるなんて楽でいいわー」
実は回収された物は何故かスマホのメモ帳に記録される、至れり尽くせりだ。どうやら(製薬 検査)の部屋でどんな物か検査されてから記録されているらしく回収されてから若干のラグがあるもののきちんと記録されて通知がなる。それが雑草であれ何が入ってるかわからないポリタンクでさえ中身の液体や雑草の種類別に保管されて記録を付けてくれるのだ。
スマホを手に入れるまで自分でも何がなんだかわからない物もあったので、正直嬉しい能力である。
「うお、ガラス瓶の中身は硝酸かよ。処理業者の選択まち…うぇ!?隣の瓶の中身は濃硫酸!?ヤバすぎ!!」
どうやらこの場所に捨ててある物はヤバい物が多いかもしれない。これは…
「っしゃあ!薬品回収タイムじゃー!!」
そう、火薬製作に使う硝酸に乾燥剤や脱水剤に使われている濃硫酸は滅多に手に入らない。間違いなくレア資材だ。
「ジャンジャンいくぜー!」
俺はそう言いながらどんどん回収していった。
~しばらくして~
「……おや、あれって…」
工業用モーターから始まり電動丸のこぎりの替え刃や壊れたエアー式のくぎ打ち機、ボロボロになっていた毛布や服や軽油が多少のこったポリタンクなど色々な物があった。
他にもガラス瓶に入った水銀や硫酸などヤバめな薬品も回収したりしてどんどん回収していたんだが俺は一旦手を止めた。目線の先には黒と黄色のストライプ柄のドラム缶、ドラム缶には三角の形の若干破れて読みにくいシールが貼られていてシールには『…の為取り扱い注意』とだけ書かれていた。
俺はアレを過去一回だけ回収した事がある、そしてあれは俺が最も欲しかった2つの物のうちの1つが入っていることも知っている。
「おう…まじかよ、マジでお宝の山じゃんココ」
俺はそう言いながらドラム缶に触る。そしてドラム缶が消えて数秒後スマホの通知が鳴る。
「やっぱり…」
俺はスマホの通知に書かれていた内容を見ながら呟く。
「モンスターの血か」
スマホの通知には鉄の他に『モンスターの血 194リットル』と書かれていた。
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