第5話 修正版

冷静になって考えてみよう。

まず、狩りゲーとは何か。

それはズバリ強い生き物に挑み倒す、これである。

最初は魔法もない世界観でプレイヤーも雑魚敵に苦戦するレベルだ、だが徐々に知恵や道具を活用して強い敵を倒す。そして更に倒した敵を素材にして新たな武器や防具などを作り更に強い生き物に挑む、そのスリルと強敵を倒した達成感が狩りゲーの魅力だ。

だがこの世界は狩りゲーが無い、何故なら…


「この世界はダンジョンが……狩りゲーに似たリアルな環境がある……!!」


前の世界と余り歴史が変わっていなければ1900年代はゲーム全盛期、そんな時代に突如狩りゲーみたいな環境が生まれ、更にはジョブやスキルの概念が生まれ、そのまま時が経過したとする。

そしてもし俺が前の世界の知識が無く、ゲームクリエイターになりいざゲームを作るとなったなら、俺は絶対に狩りゲーなんて思いつかない。

何故ならリアルでスリル満点の狩りができるからである、正直リアルで出来るからゲームでは刺激が足らない。需要が無いに等しいのだ。

事実、結構アングラのサイトには少しはあったがメインはストーリーと対人戦でモンスターを狩る要素はオマケもオマケ。

そして調べたら過去1作品だけだが狩りを題材としたゲームは販売されていたがスタンピードを経験した殆ど人達がデモムービーを見るだけでPTSDを発症してしまう事件が各国で勃発、最後には大規模な裁判沙汰になったらしい。

そしてその後からゲーム業界から狩ゲーは作る事自体敬遠されている様になり今に至るわけらしい。


「……」


俺は狩りゲーが大好きだ。何故なら前の世界で唯一の趣味であり俺の人生の一部と言える物だ。

確かに狩りゲーと一口に言っても色々あり物語に力を入れている奴や物理エンジンがヤバい奴、グラフィックに力入れすぎてパソコン自体を壊してくる奴やモンスターに力入れているスタンダードみたいなやつもある。

しかし俺は全ての狩りゲーをクリアーし、全モンスターを狩りまくったし素材で作れるやつも全て作った。だから俺はもはや狩りゲーと言う枠組みの箱推し…いや、もはや俺の人生と言ってもいいくらいの存在なのだ。

しかし、この世界ではスタンピードのせいでそのゲーム自体を作ることが敬遠されている始末だ。


「…っ…」


俺は唇を噛みながら立ち上がり壁に向かって歩く、そして…


「ふざっけんな!」


ゴンッ


壁に頭をぶつける、勢いよく。


「俺は!」


ゴンッ


「狩りゲーが!」


ゴンッ


「『狩りが』」


ゴンッ


「『やりたいんだよ!!』」


ゴンッ


俺は何度も何度も頭を壁にぶつける。転生して1番の衝撃に頭が狂っていたと思う。

だからだろうか…



ピチャッ



俺の後ろの景色が深い霧に包まれていくのに気が付かなかったのは…



〰︎数分後〰︎



「…ッ…ッ…」


俺の頭が赤く腫れる位で落ち着いてきた。


(…クソッ!どうしよう、こうなったら今からゲームクリエイターの勉強していつかあの名作達をオマージュした奴をつく……いや、それは作品に対する冒涜だしそんなのを作っても今の世の中じゃスグに叩かれて廃れてしまう!)


俺はそう思いながらふと気づく。


(…あ、腹減った)


俺はお腹を抑えてふと気づく。今の俺は5歳の体だ、前の俺の体では一食抜いた位なら耐えられるがこの体は成長期だ。空腹には耐えられるわけない。


「確か父さんがサンドイッチをつく……は?」


俺はそう言いながら振り向いた、そして目に入ったのは…


「…え?みっ湖?それに…教会?」


空には満点の星空に赤い満月と黄色い三日月があり、それを水面に映した広い湖と一目で古びていると分かる庭付きの教会みたいな建物が目の前に広がっていた。






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