~山着~ 第五話
初日は問い質す・・・もとい、質問することを諦めて翌日。
当然のように叔父は仕事のため朝昼は不在なので、田舎へ来たついでにあなたのおばあさんの墓参りへと行きました。
もう何年も田舎には来ていません。おばあさんが亡くなった際、幼い頃に母に連れられて来たとき以来です。
道中の景色はすっかり変わっていて見慣れないコンビニや、ガソリンスタンド、蕎麦屋さんなどが点在しています。
そもそも幼い頃のうろ覚えな道なので、迷うかも、と不安にもなりましたが、体が覚えていたのでしょう。どんどん民家も少なくなっていき、そして気が付けば山沿いへ。木々が視界の大半を占める風景を支配的にして行きます。
そもそもあまりインフラも都会のように複雑なほど進んでいる訳でも無いので、車が通れるような補整道路も少なく国道や主要道路だけで迷うこともなく進み、いつの間にか颯爽と立ち並ぶ墓石の規則的な風景が目に入ってきました。
昔に見た時より広くなった気がします。数十基と、ここ一体が墓地となっていて、あなたは車を専用駐車場に止めて隠坊さんが管理している場所でお花やお線香を買い、あなたの祖母、祖父が眠る墓前へとやってきました。
水桶に汲んできた水を掛け、お花を供え線香に火を灯し、手を合わせます。
祖父はあなたが物心がつく前に亡くなっていました。
《ぜんぜん来れなくてごめん》
先ずは申し訳ないという気持ちが先立ちましたが、直ぐに自身の不安や身のまわりに迫る『モノ』について頭の中で問いかけました。・・・いえ、問いかけた、といっても形容しようがない『モノ』についてなんて言えばいいかも分からず
《あれはなに?》《どうして見てくるの》《何がしたいの》・・・・・・
質問なのか、問いかけなのか、尋問なのか。よく分からない思考の中で、とにかく必死に語りかけました。
『モノ』につい意識が行ってしまうのも、そしてその視線の様なものを感じる原因が、祖父と祖母に、そして父と母にこうやって会いに来ることをしなかったからなんじゃないかと。もしかすると、みんながあなたの所へまで来てくれているではと、その後ろめたさと共に感じていたのです。
カサ・・・カサ・・・コロコロコロ・・・・・・
帰ろうとしたその時、お墓の右手は更に上へと続く斜面道路になっていて、その上から二つの
少し不思議に感じました。なぜなら周辺に針葉樹なんて見かけず、周囲には他に一つも松毬なんてのは無く、この転がってきた二つ以外には全く視界には見当たりません。
あなたは近くにまで転がってきた松毬の方へと向かい、それを思わず拾い上げました。もう一つは五メートルほど上の道に落ちている石ころに引っ掛かり、止まっています。
《そういえば、子供の頃からこの上には行ったことが無いな》
ふとそんなことを思い、何があるのか、どんな風景なのかという好奇心から上へと行ってみました。二つ目の松毬を拾いに行くついでのように・・・・・・
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