第17話:メイドと女子会2
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ルークの話を聞いて、初めの5分で後悔をした――。
かつて噂で話聞いたことのある「戦術兵器」の話し、誰も見たことの無い天才「アルバート=ウィリストン」の話し……。
両方共、騎士団の極秘情報であり、知っているだけで命を狙われかねない。
しかし、知ってしまった以上は協力せざる得ない。なぜなら、ルーク達がもし今回のクエストに失敗したら、場合によっては冒険者ギルド全体が騎士団に目をつけられ、ギルドが解体されかねないからだ……。
「何でこんなに厄介なことを持ってくるの!アナタは!」と私が怒鳴ると「すまん。お前しか頼れる人がいなかった」と項垂れるルークに、それ以上の言葉をかける事が出来なかった。
今回の大まかな作戦はこうだ。ルーク達が砦へと攻め入り、私がギルドを守る。
もしアルバートの狙いがギルドなら、必ずルーク達が不在の時に戦術兵器を東ギルドに送り込んでくるはずである。
そこで、戦術兵器を発見次第、私がギルド長権限を使い、その場にいる全ギルドスタッフと冒険者達で迎撃する。しかし作戦を説明する際にルークはポツリと呟いた。
「戦術兵機がギルドを訪れたら十中八九襲撃だと思っている。戦術兵器をギルドに送り込む理由がねえからな。ただ俺は正直、アルバートに戦う意志は無いとも思っているんだよな……。戦術兵機は10歳くらいの少女なんだろ……。しかも、5人の少女を自分のせいで失い、今いる少女は6人目。もし俺なら『自分はどうなってもいいから、この子だけは助けたい』と思っちまうけどな……。」
もし私がアルバートと同じ立場なら、ルークと同じ考えだろう。であれば……。
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ギルドの入り口から真っ直ぐ進んだところに、クエストを受領するための受付がある。
受付は幅の広いスタンディングのカウンターになっており、丁度胸から上が見える程度の大きさの窓が10箇所設置されている。各窓ごとに受付嬢がおり、冒険者と対面でクエストの受付作業を行うことが出来る。
本日のギルド業務が開始し、1時間程度が過ぎた。
業務開始直後は良い条件のクエストを我先に受領しようと、多くの冒険者達が殺到するのだが、1時間も経つと手の空いた受付嬢がチラホラと見える。
そんな受付嬢の後ろから、私とミリアは窓越しに入り口をジッと見ている。
「ミリアさん、よろしいかしら!?物凄い魔力を秘めた10歳前後の少女がこのギルドに訪れる”可能性”がありますわ!!!彼女はこのギルドをブチ壊そうとするかも知れませんし、私達に何か相談を持ちかけるかも知れません。そのため、もし10歳前後の少女が現れたら殺意があるか否か、見極めて頂きたいですわ!」
先程ミリアに伝えた内容だ。戦術兵器のことを隠しながら良い感じに伝えられたと我ながら感心してしまう……ミリアはポカンとした表情で「は……はあ……?」と分かっているのか、いないのか、分からないような声を上げたが……。
もし何事もなく時間が過ぎ去り、ルーク達がクエストを完遂して帰ってくればそれで良し。
だが、もし戦闘となった場合ミリアだけは絶対に守らなければならない。私の無茶苦茶な依頼により、危険に晒されているのだから……。
私の持つ魔導書に記載されている最も強固な結界のページを開き、太ももに括り付けている短剣をいつでも鞘から引き抜けるよう準備をした。
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ギルドの扉が開き、屈強な男2人が、大きなワーウルフ――狼の魔物の亡骸を引きずりながら入ってきた。男たちはご機嫌で、足取りも軽やかだ。
その男たちの影に隠れ、小さな少女が目に入った。
腰の高さまで伸びた銀色の髪は綺麗に梳かれており、太陽の光をキラキラと反射している。身長は135cm程度だろうか。頭の先から足元まで紺色のゴシックロリータ衣装を身に着けており、少女の真っ白な素肌によく映える。
一瞬、大きな人形が歩いているのかと見間違えた。
しかし、異常な点が1つあった――180cmは越えるであろう大型のゴブリンの亡骸を4体、大きな鎖で縛り上げ、引きずりながらギルドへと入ってきたのだ。しかも余程長い距離を引きずられたのか、足がもげているゴブリンもいた。
私はハッとして結界魔法を発動させようとしたが、それよりも早くミリアが少女に向かって駆け出した。
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ミリアは冒険者達の隙間を縫い少女の側に近寄ると、目線を合わせるように両膝をついて少女のことを抱きしめた。
私の目には、少女は表情が無いように見える――無表情でも”無表情という表情”をしていると感じるものだが、少女には文字通り表情が無い。
しかし、ミリアが少女を抱きしめたまま、背中を優しくトントンと叩くと、表情の無いその瞳から大粒の涙がポロポロと零れ落ちた……。
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