不徳の勇者、溺愛メイドに御奉仕される ~勇者「俺はショタ化したが大人だから自分でできる」メイド「大人ですか……では、夜の御奉仕も精一杯ヤらせて頂きますね」~
プロローグ2:死にたい勇者と訳ありメイド2
プロローグ2:死にたい勇者と訳ありメイド2
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「息を飲む」と言う言葉はあるが、実際に息を飲んだのは初めてだった。
整った顔立ちに大きく切れ長な瞳、太陽に照らされ光り輝くプラチナブロンドの前髪を横に流し、頭には清潔感のある真っ白のメイドキャップを被っている。年齢は20代前半くらいだろうか――黒縁の大きなメガネと髪型で少し野暮ったく見えるが、それすらも清楚に感じる。そして彼女は、ボロボロのアパートには似つかわしくない、王室メイドに支給されるヴィクトリアン風のメイド服を身に着けていた。
想定外の出来事に困惑をしていると、メイドは抑揚の無い事務的な声で「失礼します」と言い、大きなカバンを引きずりながら私の横を通り部屋へと上がろうとする。
向こうから訪ねてきたとはいえ、女性を部屋に上げるの流石に抵抗があるので「ちょっと……」と背伸びをして彼女の肩を掴むと、彼女は地面につきそうなロングスカートを揺らしながら振り返り、
「私はミリア=ミシェルと申します。国王命令によりセツナ様専属のメイドとして参りました。今後はミリアとお呼びください。これからよろしくお願いいたします。」
と、深々と頭を下げ、柔らかく微笑んだ。私は悪意が一切感じられない微笑に、何も言い返すことが出来なかった。
◆◆◆◆
私は、ミリアと名乗るメイドを居間へと案内し、椅子へと座らせコーヒーを用意した。コーヒーを淹れるなど、いつ以来だろう……そんな事を思いつつ、コーヒーを8分目まで注いだ木製のマグカップを、ミリアの前に置いた。砂糖とミルクの有無を聞くと、ミリアは
「ブラックでお願いします。あと、今後は私がやりますので、お申し付けください。」
と答えた。私は「良いから」と応え自分の分のコーヒーを持ち椅子へと座る。年代物の椅子がギシギシと悲鳴を上げた。
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ミリアに対し一通りの質問を行ったところ、国王は少年へと戻った私の事を気に掛けており、私のことを心配してこんなボロボロのアパートにお目付け役を兼ねた住み込みのメイドを派遣したとのことだ。
彼女も災難だな……国王に嘘をつくのはどうかと思い、私が神に願った内容と、神から言われた内容を正直に話したことが裏目に出てしまった。いや、もし私があそこで黙っていたのなら、私は神に若返りを願った痛いやつになっていただろう……。
こめかみを抑えながら国王命令が本当なのか確認すると、ミリアは国王印が押された仰々しい令状を机に広げた。
ミリア自身の事も訪ねたが、元々就いていた住み込みの仕事を辞めてメイドとなったらしい。
前職の詳細は、はぐらかされてしまい聞き出すことが出来なかったが、まだメイドになってからは日が浅いとのことだ。しかし細かな所作が可憐であり、出会いから数時間しか経っていないが、とても新米のメイドには思えない。
ミリア自身に関する話はどこまでが真実かわからないが、まあ、国王のお墨付きなので素性はしっかりしているのだろう。とは言え彼女のことを雇うつもりは無い。私の住む部屋は約六畳一間であるため二人で暮らすには狭すぎる。それにプライベートな空間が無いため女性には厳しいだろう。そもそも、誰かと一緒に暮らすなど御免だ。
周りの人達に引き止められ、渋々この王国で暮らしているが、出来ることなら人里離れた山奥にでも籠もり誰とも関わる事も無く、ひっそりと生涯を終えたい。
ミリアは冷めたコーヒを一口のみ、目を細めながら私が口を開くのを待っている。私は彼女をの方を向き、言葉を選びながら口を開いた。
「お越し頂いて申し訳ないのだが、私はあなたを雇うことは出来ない。ご覧の通り部屋は狭く、男女が二人で暮らすことが出来る部屋ではない。もし二人で暮らす場合、着替えを行う場所にすら困ってしまうだろう。」
「失礼ながら、確かにここは広いお部屋では御座いませんね。私が着替えている姿を見られてしまうこともあるかも知れません。でも、私は構いませんよ。それに私は、ここを追い出されたら行く宛がありません。」
なかなか手ごわいな……しかし、私としても引くわけには行かない。
「国王様に事情を話そう。私が生活に苦労していないことを理解して頂ければ、分かってもらえるはずだ。それに、貴女程の美しい方なら、もっと良い家に派遣して貰えるだろう。もしかしたら貴族のメイドになれるかも知れない。」
これは嘘ではない。彼女の器量があれば「是非うちに」と手を挙げる貴族も少なくないだろう。評判の良い家で雇ってもらう事が出来れば、こんなボロ屋敷で働くよりも遥かに良い暮らしを送る事が出来る。ミリアはこちらをジッと見つめたまま、
「私は良家のメイドになりたいわけでは御座いません。セツナ様にお仕えするためにメイドとして働いております。」
体の良いリップサービスだ。ただ、より良い環境を提案すれば引いてくれると思ったが、何故、良いとは言えない環境である私の下で、メイドとして働きたいのか……思考を巡らせても思い当たる節がない。
私を狙う刺客か……いや、もし私に差し向けられた刺客であれば国家の威信に関わるため、令状を出す前にお縄につくだろう。それに、ミリアからは殺意や打算的な雰囲気が一切感じられない。
これは……なかなかどころか、かなり手強いな……。
「もしこの家でメイドとなる場合、私と二人暮らしになる。狭い密室に男女が二人――貴女には国王の後ろ盾があるし、私が少年の姿なので油断しているかも知れないが、変な気を起こすかも知れない。それでも良いのですか?」
と冗談交じりに言う。我ながらゲスな事を言ってしまったが、これで諦めるだろうと考えていると、ミリアはおもむろに私の横に立ち濡れた瞳をこちらに向ける。10秒前の凛とした顔付きからは想像のつかないような、蠱惑的な表情を浮かべながら「どうぞ」と耳元で囁き、ゆっくりとスカートをたくし上げた。
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