2.招待客
「何だって金持ちのお遊びってのはこうもアクセスがゴミカスなんだ……」
本日の招待客。「リストランテ Guranat」のロゴがわざわざ手書きで、しかもこじゃれたブルーブラックインクで書かれた手紙によって招かれた男性。
彼の名前は焔木 業(ホムラギ カルマ)、少年の面影を未だ残すアラサーだ。残念ながら威厳がない顔立ちをしている彼は、それが少々コンプレックスとなっている中小企業の営業職だ。「俺が中々昇進しないのはこの童顔のせいだ」と、酒を呑むと必ず愚痴をこぼす彼は、うろんな噂が無責任に流れるこのレストランに招かれた。
無駄にリストランテだなんてシャレオツな名前にしているだけあって、店内の調度品は品がある。調度品だけに、だなんてしょうもないダジャレが思い浮かぶ、平々凡々な一般市民の焔木は、どうしても落ち着かない。彼は今までこんなに高級だろう品々に囲まれたことなどないのだ。あったとて、成金野郎もしくは成金女郎の悪趣味インテリアくらい。
「フルコース方式ではないので、先ずはこちらのメニューでお好きなものをお選びください」
スラックスタイプの、現代の様々な面倒ごとに配慮したが故にむしろセクシャルが香るメイドさんに渡されたメニュー。本日のメニューかと思えばある程度種類がある。やはり山の奥ということか、ジビエと思しき肉料理が多い。
「えーと……『すね肉をじっくり煮込んだコンソメスープ』と『日替わり配合のハンバーグステーキ』、『ハーブ香るミートテリーヌ』に『自家製ベーコンをたっぷり乗せたシーザーサラダ』、デザートは『ラードを使ったパウンドケーキ』で」
「かしこまりました、お飲み物はいかが成されますか」
「あ、すみませんがワインには詳しくないんです。アルコールにもあまり強くなくて」
「では炭酸水をお出しします。サラダとテリーヌが先にご用意できますので、それまでしばしお待ちください」
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