第4話 夜釣りの時に出会った女の子は今日も笑顔が綺麗だ
「色々ありがとうございました。あなたと少しだけでも話せてよかったです。まぁ、私なりに頑張っていきますね」と多分、この子の本来の笑顔を見してくれた。この笑顔があれば、芸能界だろうと、どんな世界だろうとわたっていくことができるだろうな。
俺が女の子の、その笑顔に見惚れてると「あっ!」と女の子は、思い出したかのように口を開いた。
「話に夢中になってて、まだ私の名前を言ってませんでしたね」
「そう言えば、そうですね」
「えーと、改めまして、タレントの卵の高海月花(たかみ つきか)と言います」
高海さんの自己紹介の声は、滑舌が良く、普通に会話をしている時の声よりも聞き取りやすくて、タレントの卵ということが何となくわかってしまう感じだった。きっと普段から、自己紹介の練習をしてるのだろうな。
「高海さんですね。テレビで活躍するの待ってますね」
「ふふふ、活躍できるのがいつになるかわかんないですが、そう言ってもらえると嬉しいですね。それじゃ、私はそろそろジョギングに戻りますね。お兄さんもお気をつけて!」
「そっちこそ、夜道は危険なので、お気をつけて!」
そう俺が言うと女の子は、「はーい!」と言った後、両腕を上に上げて、軽く身体を伸ばしてストレッチをした。体を伸ばした瞬間に、お腹のおへそが少しだけ見えたが、本人は気づいてない感じなので黙っておこう。俺は、少し身体が熱くなるのを感じた。
「それじゃ!また、どこかで会ったらまたお話ししましょう。あと、さっきから思ってたんですが、竿曲がってますし、何か釣れてませんか、それ」と俺の釣り竿に指さして高海さんは言った。
俺は、慌てて自分の釣り竿を見ると、確かに竿先が揺れてて、何か魚が食いついたようだ。「え、本当だ」と思わず口に出して驚いてしまった。
「釣れてよかったですね!それじゃ、私はいきますね!お兄さん、バイバイ!」そう言いながら、高海さんは、白い綺麗な手のひらをこちらに向けて振ってくれた。それに合わせて、俺も「バイバイと言いながら」手を振った。俺が、竿を持って魚を引き上げたのは、高海さんの姿が見えなくなってからだった。
6月10日 午後21時
今日も俺は、夜釣りに来ている。理由は、前と一緒で有り余る暇を潰すために釣りをしている。しかし、一ヶ月前ぐらいから、もう一つこの場所に夜釣りに行く理由ができた。それは‥
「こんばんは。今日は何か釣れましたか?」
そう、高海さんとまた会うために、俺は今も夜釣りを続けている。
逃した魚は大きかった‥ 黒バス @sirokuro2252
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