第3話 夜釣りの夜に出会った女の子は今日も

「そ、そんなことないですよ。いつも失敗ばかりで周りに迷惑かけてばっかりなんですよね。ちゃんとしないとダメなのに、空回ってばっかりで、口も下手だし、教養ないし、何もかもダメダメで、本当にこんな自分が嫌になりますよ」と女の子は、作り笑いをしながら言った。


「でも、こうやって努力してるじゃないですか。それだけでも、すごいことだと思いますよ。こんな所で、大学の課題もせずに、ずっと釣りをしているだけの人間に比べたら特に」と率直な感想を言った。


「あなたは、あなたで見ず知らずの私を励ましてくれる優しい人じゃないですか。でも、正直言うと芸能界って優しいとか、あんまり意味がないんですよね。遠慮していたらすぐに周りに埋もれてしまうんですよ」と女の子は、さっきとは違う暗い口調で話を続けた。


「努力するだけじゃダメなんですよ。結果が出ないと。みんな結局は、わかりやすい結果しか見ないから、影の努力はその次ですよ」


「うーん、そんなもんかな」


「そんなもんですよ。私には画面映えする華もないし、他に可愛い子がいたら埋もれてしまいます。そんな子がタレントとしてやっていけるとは思いません」


「ん、君も十分可愛いだろ」勢いに任せて、本音がポロリと口からこぼれ落ちた。


「ふふふ、お世辞でも、とっても嬉しいですよ。励ましてくれてありがとうございます」


「お世辞じゃないよ。普通に出会った瞬間から可愛いなって思ってたよ。あと、緊張してなかったらこうやって普通に話せてるんだから、場数を踏めば緊張もしなくなると思うよ」


「ふふふ、そんなもんですかね」


「昔から、魚とチャンスは寝て待てと、よく言ったり、言わなかったりてね。チャンスが巡ってきた時に頑張ればいいんだよ。あ、それが今なのか」


「何ですかそれ、ふふふ。あなた、少し変わってるって言われるでしょう」と女の子は笑いながら言った。女の子の顔に、少し輝きが戻ったように感じた。やっぱり、笑った顔がとても可愛い子だと改めて思った。



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