第2話 夜釣りの時に出会った女の子

「あの、何か釣れますか?」と突然現れた女の子は、繰り返しいった。


「今日は、何も釣れないですね。潮が悪いのか、さっぱり何も釣れないですよ」


「そうなんですか‥。頑張ってください」と女の子は少し寂しそうに言った。


少し間が空いてから、女の子は再び口を開いた。


「あの、なんで釣れないのに釣りを続けているんですか?」


俺は少し考えてから口を開いた。「うーん、別に釣りが好きなわけじゃないよ、ただの暇つぶしだね」


「そうなんですか‥」と擦れるような語尾を言った後に、女の子は、悲しいことがあったかのように、「しょんぼり(゚ω゚)」とした顔をした。

おそらく「自分が投げかけた問いに対して、思っていた答えじゃなかったので、次の会話をどうするべきか分からなくなった。そして、いつの間にか会話が終わっている」て感じだろうな。典型的な考えすぎなコミュ障のパターンだ。

女の子が可哀想だから、自分から話かけることにした。


「あの、お姉さんはこんな所で何をしているんですか」そう聞くと、お姉さんは、再び口を開き照れくさい笑顔をしながら話だした。


「えーと、実は私はタレントの卵で、芸能関係の仕事を志してる者です。そう言っても、まだ全然売れてない無名な存在なんですけどね」


「へー、そんな夢追い人がこんな暇人に何で話しかけたんですか」


「えーと、実は今度、初めてのお仕事をもらえて、それが「街頭インタビュー」ていう、街にいる人に声をかけて、その人の面白い話を根掘り葉掘りしていく企画でして‥」


「イメージとしては『月曜から夜○かし』の街の人に聞いてみた!みたいな感じですか」


「そ、そんな感じです!」


「なるほど、つまり俺は知らない間にお姉さんのインタビューの練習台になっていたわけですね」


「申し訳ないです!すいません!やっぱり、迷惑でしたよね」


「いやいや、大丈夫ですよ。まぁ、少しびっくりしたぐらいです」


「私、昔から人との会話が全然弾まなくて、何か話していてもすぐに会話が終わっちゃうんですよね。まぁ、単純に私のコミュニケーション能力が低いだけなんですよね。根暗だし、華がないし‥」そう言うと、お姉さんは暗くて何も見えない海の方を向いて、深くため息をついた。


「うーん、お姉さんなら大丈夫でしょ。だって度胸あるし」と軽い口調で俺は、言った。


俺は、魚が釣れない暇な時間を潰すために、お姉さんを励ますことにした。


続く

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