逃した魚は大きかった‥
黒バス
第1話 夜釣りの時に
5月12日 21時 東京湾のとある堤防にて
耳の鼓膜に風が吹く音と波が海岸に打ち付ける音が混ざり合った鳴り響く。釣り竿につけた、魚が餌に食いついたら教えてくれる「食わせ鈴」は一向に鳴る気配がないのに、虚無の時間だけが刻々と過ぎ去っていく。
突然だが「釣り人」と聞いてどんな人を思い浮かべるだろうか。ちなみに、俺は今、誰もいない堤防で夜釣りをしている。
多分、多くの人が「自然が好きな人」や「魚が好きな人」を思い浮かべると思う。しかし、実際には、「有り余る暇を潰すために釣りをしている人」もいる。俺もその一人だ。
釣りは、何となく子供の時から親父の趣味に付き合っていたから始めただけで、特に好きなわけではない。だけど、休日に何もしたくないわけではない。そんな矛盾した感情が俺を釣りに駆り立てている。
夜釣りを選んでいる理由は、堤防に人が少ないからだ。誰もいない空間の方が俺は、落ち着くし、何より人の目を気にせずに過ごせるのがいい。そう考えると、俺は、釣りが好きというよりも一人で何も考えない時間が好きなのかなと思う。
「何か釣れますか?」風が吹く音と波が海岸に打ち付ける音に混じって、突然聞こえた。
驚いて、声に振り向くと、暗い中、常夜灯の少し汚い光に照らされて、一人の綺麗な女の人が立っていた。肌は透き通るほど綺麗で、顔は造形物のように綺麗に整っていた。しかし、服は芋くさいジャージ姿で、色々勿体無い気持ちになった。
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