第4話 盗聴?しちゃった
【前回までのあらすじ】
私、高2女子の
そのゴイサギ、自称“ゴイっち”のせいで奇行を繰り返してしまい、保健室の先生から「狐憑き」ではないかと疑われる始末だ。
ゴイっちとリンク出来なくなって焦った私は、川辺でゴイっちを見つけて嬉しさから話しかけた。その直後、婦人警察官から声を掛けられて動揺してしまう。
□婦警コンビ、ラリホ&ビンちゃん
「どうだった?」
ミニパトに乗っていたもう一人の婦警が降りてきて、さっき私に声を掛けた婦警に確認した。
「だめね、何の心当たりもなさそうだった…でも…」
「でも?」
「鳥と話せるんじゃないの?って冗談を言ったら慌てていたのが滑稽でさぁ」
「なんで?」
「だって、お母さんが心配しているから帰らなきゃ、」なんて子どもみたいなこと言うんだもん」
「ちょっと引っ掛かるわね…本当は何か隠してるんじゃないかしら」
「そっか。さすがビンちゃんね。私なんてそんなこと思いもしなかったわ」
「ラリホは暢気なんだから。でも、だから『鳥と話せるんじゃないの?』なんて言えちゃうんだけどね。それがあの子に揺さぶりをかけたってわけよ」
「ビンちゃんにはかなわないね」
そんな婦警同士の会話が私には筒抜けだった。
□婦警さんゴメンね、盗聴しちゃった
私は、「ラリホ」と呼ばれている婦警さんから不審者の目撃について問われた後、おっしゃるように「お母さんが心配しているから」なんて見え透いた嘘をついて家路を急いだ。
だって、ゴイっちに思わず囁きかけたところを目撃されたのではないかとヒヤヒヤしたんだもん。
家に向かいながら、気になったのでゴイっちの脳にリンクしてみた。ゴイっちは幸い、まださっきの川辺からあまり移動していなかったようで、婦警さんたちの様子をこっそり覗いてもらったのだ。
分りやすくいうと、私がゴイっちにリンクしてスパイのように聞き耳を立てたのである。ゴイっちの脳の情報によると鳥の聴力は人間より少し劣るらしいが、私が意識を集中することで二人の会話を盗聴するには十分だった。
“ミニパトのお姉さん”二人は、水色の半袖シャツに藍色のスカートというドラマやアニメでよく見るような制服を着ていた。スカートは膝丈で、さすがにミニスカポリスのように短くはない。
さっき、川辺で私に話しかけてきた婦警は「ラリホ」というニックネームなのだろう。芸能人にたとえると吉岡里帆のような色白美人で、温厚そうな感じだった。
一方、ラリホから「ビンちゃん」と呼ばれた婦警は、ボーイッシュなヘアスタイルで、ニックネームのようなキレのよさを思わせた。
最近の芸能人に思い当たるキャラがいないので、ミーハーな私はスマホで「ボーイッシュ 女性タレント」と検索して調べていったところ、80年代女性アイドルの「大沢逸美」が見つかった。
ヤバい、「ビンちゃん」と完全にダブってしまいそうなほど似ている。
いやいや、そんなことに感心しているほど悠長な状況ではない。
“切れ者”ビンちゃんは、私が何かを隠しているかもしれないと疑っているのだから。
やがて、ビンちゃんとラリホはミニパトに乗ってどこかに行ったので、私もゴイっちとのリンクを解除した。ゴイっちありがとね。
自宅から母に見つからないように抜け出していたので、またこっそり自分の部屋に戻ってベッドに横たわった。ゴイっちとリンクした後は疲れるので、しばしまどろんだ。
「なつき!なつき!」
母が呼ぶ声で目が覚めた。
「なつき!パンちゃんがまだ帰ってこないのよ!見なかった?」
母親らしくない緊張感のある声から事態を察して、ふと時計に目をやると7時になろうとしている。
7時頃には夕食の支度ができるので、妹は6時半頃には戻ってきて必ず家にいるのがパターンだ。
ふと婦警から聞いた不審者情報のことが脳裏をよぎった。
「20歳から30歳前半ぐらいの男性が、小学生の女の子に道を聞いてくるので、怖がれているらしいの」と言っていたのだ。
私は妹が「友だちが公園で待っているから遊びに行く」と言っていたことを思い出して、駆け出した。
「気をつけてね」
母親の心配そうな声が響いた。
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