サヤカ⑤

事故からしばらく経ち、ワタシはとりあえずタクヤとして日常を過ごしている。


当然のことだが、タクヤの両親も友達も周りの人もタクヤとして接してくる。


どうやらワタシの両親(とくに母)はタクヤを恨むことで悲しみを転嫁しているようで、ワタシの両親とタクヤやタクヤの両親の関係性はぎくしゃくするばかりだった。


こんなときタクヤだったらどうするだろうか。

何度でも謝りに行くのが正解なのか、このまま距離をとり絶縁していくのが正解なのか、この状況下でのタクヤの気持ちを想像することは難しかった。


タクヤのパパは定期的にワタシの実家に通ってくれているが門前払いが続いている。


男友達はタクヤを元気付けようとエッチな本やエッチなおもちゃをもって遊びに来る。

これが男の子の文化なのだろうか。


「失恋の傷は恋愛で埋めろ」

なんて言って女の子を紹介してくれる人もいる。


生前私とも仲良かったトモコちゃんは

「ずっとタクヤが好きだった」と告白してきた。

いかに自分が私より優れた女であるかを説いていた。

おまけに私の悪口まであることないこと吹き込んで。


死人に口なしとはよく言ったもんだ。



そして事故から2年が経とうとするころ、タクヤのママが涙ながらに訴えてくる。


「もうサヤカちゃんのことは忘れて前にすすみなさい、あなたが抱え込むことじゃないのよ、あなたは悪くない、自分の未来を生きてほしいの」


…と。


きっとタクヤのママは将来タクヤが結婚して家庭を築いて子供をもうけて…みたいな未来を望んでいる。


そんな思いか伝わってきた。

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