サヤカの母③

後日、淑女とともに先生がいらっしゃる会館へ出向く。


受付の方や会館の中にいた人は皆優しく声をかけてくれる。淑女が私の経緯を説明すると一緒に泣いてくれる方もいた。


とても温かな空間だった。


娘を失ったあの日から、目の前がこんなに彩ったのははじめてだ。


会館では問診のようなものを記入し、水を浴びて襦袢に着替えた。


濡れた髪を乾かすこともなくそのまま正座をして一人で待つ。何分待っただろうか。


しばらくするとスーツ姿の男性が入ってくる。


男性は私のことの経緯を知っていた。多く話さず、ただ娘に会いたいかと聞かれ答えると煙のむこうに娘の面影を写し出し、ここに娘の魂がいる話せるのは10分間だと言い男性は部屋を出る。


私は娘の影に話しかける。

ごめんねとありがとうと…たった10分、一方的に伝えたい思いで溢れた。時々揺れる娘の影が私の問いかけに答えてくれるようだった。


亡くなった人も来世で生まれ変わるまで魂は現世に残る。

その魂を現世に残し続けるには先程のように定期的に降魂しないといけない。

肉体がなくなっても魂とはずっと繋がっていられる。


そんなありがたい教えを説明していただいた。


そして先程のスーツ姿の男性が淑女が言う先生で、先生が「会館に通えるのであれば魂を袋にいれてお家に連れて帰っていただけますよ」と言う。


私は即お願いし、綿のつまった小さな巾着袋のようなものに娘の魂をいれてもらった。


不思議と娘の匂いがするような気がした。

人肌のような温かさも感じた。


降魂と入魂は思っていたより費用がかからなかった。娘の魂をそばにおいておけるなんて、こんなにもありがたい話はないので、お布施は気持ちで良いと言われたので精一杯の気持ちを納めた。

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