サヤカの母②
娘を失ってからの日々は、ただ時間だけが過ぎる感覚だった。
娘の香りを感じたくて、娘の空気を感じたくて、娘が好きだった場所や娘との思い出を噛み締めるように過ごした。
ある日、娘がバイトしていたファミレスで一人でモーニングを食べていると上品な淑女が話しかけてくる。
「あなた、どうしたの?何か困っているのかしら」
最初は困惑したものの人と話すのは久しぶりで、相手は他人だからこそ事の経緯を話してしまった。
娘が彼氏とデート中の交通事故で亡くなった。
彼氏と事故の相手方の運転手は生きているのに娘だけが亡くなり、心のどこかで娘の彼氏を恨んでしまっている。
気がつけば見ず知らずの淑女に娘の写真や動画まで見せてすっかり話し込んでしまう。
私の身の上話を親身に聞いてくれた淑女。
私が涙を流しても落ち着いてそばにいてくれた淑女。
私の話が落ち着くと淑女がそっと話し始める。
「実はね…私の尊敬する先生のところに行くと娘さんの魂と会えるわ。魂をお家に連れて帰ることも出来るの。どうかしら?先生に会うにはね……」
淑女は優しく続ける。
先生に会うためにはいくつかの通過儀礼がある。
しかし大切な人を失って半年以内ならその通過儀礼をいくつか免除できる…と。
実はこの日の時点で娘を失って5ヶ月程がたっていた。
早く決めないと娘の魂との対面まで通過儀礼の免除が受けられなくなる。
私は淑女に先生を紹介してもらうことにした。
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