サヤカ②

目の前に倒れる血まみれの自分。

あ、私死んだんだ。

これはいわゆる幽体離脱というやつだろうか。

自分の魂が自分の肉体を見ている、こうやって死んでいくんだ…。

その感覚は意識が遠のいていく感覚によく似ていた。









目が覚めるとそこは病院だった。


私は生きていた。あのあとどうなったのか、あのときタクヤはどうなったのか、全く記憶になかった。


目を覚ましたもののまだ朦朧とする私の前にはタクヤの両親。


タクヤのママが「タクヤ!タクヤ!」と大声でタクヤを呼ぶ。

タクヤのパパは慌てて病室を出た。タクヤを呼びに行ったのだろうか。


タクヤは無事だったからタクヤの両親はここで私が目覚めるのを待ってくれたのかな、タクヤはどこ?


私の両親はまだ病院についていないのかな。


タクヤのママとパパが慌ただしくしていると病院の人が数人が病室に来た。


「目が覚めたようですね、アナタは交通事故で搬送されました。骨折が数ヶ所。その他は今のところ異常は認められていません、意識が戻られたので改めて検査をしていきます。事故の状況は覚えてらっしゃいますか?ご自身のお名前はわかりますか?」


「……ヤマシタサヤカ。」


事故の記憶は曖昧だったのでとりあえず名乗った。


ワタシが名乗った瞬間にタクヤのママがハッとして顔を背けて泣き出す。


病院の先生とタクヤのパパがアイコンタクトをしてしばらく沈黙が続く。


タクヤのママが涙ながらに話し出す。


「タクヤ…タクヤ…、サヤカちゃんね…助からなかったの…」


ワタシは病室の重い空気が理解できずにいた。


「は!?え…?えぇ!?」


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