第4話
ムッシュはA君の話を聞き終わると「そりゃあ食材の逆襲だよ」
「食材には敬意を払って料理しなくちゃね、だいたい鹿肉とすっぽんの料理なんて素人が手に負えるもんじゃないよ。」
ムッシュはニコニコしながらA君をたしなめた。
月曜の夕方、黄色いタクシーが止まった。
M君の車だ。彼はタクシードライバーである。月曜はいつも暇だということで毎週のように寄る。M君は100キロを超える巨漢でゴリラ系の強面であるが性格は極めて温厚でいつもにこにこしている。しかし大の酒好きが仕事やその他のことに影響をおよぼしている。当然ながら血圧も血糖値も異常で乗務員の健康検査ではいつも血圧がひっかかる。会社からは数値を平常にしなければ乗務できないと勧告をうけている。M君は重々承知であるが、ズルズルと止められないでいる。
ある夜M君は仕事を終えて部屋のソファーに座りながら酒を飲んでいた。部屋は実家の隅に建てたプレハブ小屋なので気兼ねなくくつろいでいた。
部屋にはベッドとテレビと消防無線がある。無線の音がかすれた声でけたたましく交信をしている。どうやら火災発生である。M君はすかさず聞き耳をたてた。間もなく携帯に集合がかかった。M君は地域の消防団の一員である。早速支度をして長靴をはいた。消防小屋は徒歩10分くらいのところにあるので小走りで向かった。
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