第2話

 ムッシュはほどほどの数のお客さんが来ている時はすこぶる機嫌がよくお客さんとの会話を楽しんだりもした。

 常連さんも増えて個性的なお客さんも数多くきた。時折ムッシュを楽しませてくれるような話も多々あった。

 毎週月曜日にくるA君、彼は45歳独身の大工さんである。弟子を2人従えて自分で建築の請負をやっている。仕事は月曜から土曜の午前中までやって土曜の午後は3人で飲み会をやるのが常であった。場所は作業小屋の中にある休憩所である。4.5畳くらいの広さに簡易の床の間とその脇には押し入れがあり、部屋の真ん中には小さな囲炉裏まである。狭いスペースであるが大工さんらしく抜かりのない作りである。

 その日は年末も近く忘年会もかねて少し豪華にやろうということで酒の肴も少し豪華なものがそろった。数日前A君の友人の猟師が鹿の肉とすっぽんを持ってきてくれたのだ。肉はステーキ風の切れ見になっていて赤身と脂身のバランスが食欲をそそっていた。囲炉裏にのせた網の上でバーベキューにしようということになり野菜も何種類か乗せることにした。すっぽんは食べ方がよくわからないのでスープがいいだろうということになり

囲炉裏の横に置いたガスコンロに鍋をのせた。なぜか鍋のかたちが四角だったが、これしかないということで水を入れ、生きているすっぽんを入れた。すっぽんが暴れて逃げ出さないようにと蓋をしてその上に石を乗せた。おもむろに火をつけておいしいスープができあがるのをまった。

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