トラウマケアが分かる本

1-1.トラウマとは？

トラウマについて悩む方のための自助グループを４年前から運営していますが、一体トラウマとは何なんでしょうか。そして、トラウマがあるとどのようなことが起こるのでしょうか。ここでは、トラウマについて触れ、その上で現在の日本の状況についてご案内できたらと思います。

トラウマとは何か？をお話すると少しややこしくなるので、まずはPTSDという言葉から説明をしていきたいと思います。

PTSDとは、心的外傷後ストレス障害といい、“生死に関わるような体験をし、強い衝撃を受けた後で生じる精神疾患”（厚生労働省：e-ヘルスネットhttps://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-076.html）と、認識されています。

ここでの、生死にかかわるような体験とは、災害や戦争への徴兵などを指しています。死に直面するような、心理的に強く負荷のかかる体験を指しています。

2019年にICD-11で採用された「複雑性PTSD」では、長期にわたり、反復して、虐待やいじめなど、様々なストレスフルな体験を継続して経験していることがポイントです。

ＰＴＳＤは、この場面！と辛い体験をピンポイントでいえますが、複雑性ＰＴＳＤは長期にわたり、反復しているため、この場面だといいにくい状態にあります。また、症状として記憶の連続性がなくなる（思い出せない）という事が発生することがありますので、現状でご自身が認識していない体験もあると思います。

このような病名として診断されるかどうかについては細かく要件が決まっています。トラウマケアが必要な方であっても、必ずしもＰＴＳＤや複雑性ＰＴＳＤと診断されるわけではないという事に、まずは留意していただきたいと思います。