こんな運命、認めねぇっ!
「聞いたよ、如月くん。凄いじゃないか!」
廊下ですれ違うたびに先生方から肩を叩かれる俺は、黙れこの野郎! とつかみかかりたくなるのをグッと堪え、引きつった顔でありがとうございますという言葉を飽きるほど繰り返した。
「え? なに? なんのこと?」
「分かんない。なんだろう」
知らなくていい。知らなくて!
生徒たちの噂話を耳に入れながら俺は平然を装って教室に向かう。背中は脂汗でダラダラだった。
あの時、俺は巡査に正体を明かさなかった。ただ浅見さんの知り合いだと言ったんだ。
だけど、その翌日。当事者である浅見先生が大々的にバラしやがった。あいつバカなの? 変装した意味ねーじゃん!
まるで王子様かスーパーヒーローかって語り口で伝えたらしく、先生方はとても感動されたらしい。顔も名前も覚えていない先生から熱い抱擁をもらってベタ褒めの俺は、当然周囲の目を引く。
なにがあったの? なにをしたの? あのひと誰?
あちこちでそんな言葉がひそひそと交わされる。
いいか。俺は目立ちたくないんだ。特に「カッコイイ系」の注目だけは避けなければならない。それなのに、どうしてこーなるんだ!?
「運命だ。諦めなさーい」
爆笑する陽平をジト目で睨みつけ、俺は深々とため息をはく。
「ストーカー捕まってよかったじゃん。浅見先生もよっぽど嬉しかったんじゃないの? だから自慢したかったんだと思うぜ~」
「迷惑だ。これだから女と関わるとロクなことがない」
「まあまあ。そーゆーなって。これで悪夢にうなされることはなくなったんだしさ。噂なんてすぐに消えるって。それよかさ、今度体育祭あんじゃん。おまえなんにするか決めた?」
「いや」
体育祭か。ひとつ問題が解決したと思ったらこれだ。体育祭で運動音痴だとクラスメイトに迷惑かけるからな。どこまで本気を出すか、そこが難しいとこだな。
「もういっそのこと、バーンと目立っちゃってさ。陽キャとして生きろって。おまえは陽キャなんだよ。間違えても陰キャにはなれねーって」
「馬鹿野郎! 俺の心を折るな! 絶対に三年間陰キャとして過ごしてやる!」
キッと睨むと陽平は腹を抱えて笑いだした。
みてろ、何があっても絶対に隠し通してみせるからなっ!
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