俺の思惑、伝わってますか?
浅見は朝日を受けて輝く長い髪をふぁさっと掻き上げ、軽やかにステップを踏みながら廊下をゆく。昨日の晩は本当に大変だった。何度も何度も彰くんと至近距離で見つめ合った瞬間を思い出しでは頬を赤らめ、クッションに顔を埋めてキャーキャーと奇声を発し身もだえた。
いまでもちょっと考えるだけで顔が熱くなる。自分を見つめる冷めた眼差し。力強さ。俺様気質。なにをとっても本当にカッコよかった。いままで会った男の中でもダントツ。
あの時、豹変ぶりに驚きすぎて固まってしまったのが悔やまれる。キスしてくれれば良かったのに! キャーキャー言いながら歯ぎしりをする浅見だったが、ふと良いことを思いついた。また二人きりになれば、あんなことが起きるじゃないかって。
そこで思いついたのが「朝練」だ。放課後は他の部員も集まるし、二人きりの時間を作るにはそこしかない。当然「朝練」のことは他の部員には秘密にして。
だけど彰くんは女性が苦手だといっていたから、あんまり積極的にいくと嫌われる可能性がある。だからじわじわと距離を詰めることにした。
まずは胃袋をつかもうと思ったのだけど、残念なことに浅見に料理のスキルはなかった。一応サイトをみて勉強してみたのだが、なぜか自分で作ると違うものができる。不味い料理を食べさせるくらいなら冷食にした方がいいと思って、意気揚々と冷食弁当を作ってみたけれど結果は惨敗。
だけどそこで嬉しい言葉が彼の口から出た。
『冷食しか作れない女性って将来的に不安じゃないですか』
それはつまり、自分との未来を考えてくれるということ。そうよね、奥さんになるのならやはり料理上手でなければ。健康志向だといっていたし、夫の健康を考えるのは妻の務めだわ!
職員室に戻った浅見はみんなが真剣に会議を行っている中、身をよじりながらサイトで料理教室を検索し速攻で申し込んだ。
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