第7話

 そして今、俺は“ただの一人”となって前に進んでいる。


 誰にも何も言わず、神殿を飛び出した。


 教団も、信者も、全部捨てた。


 そんなものは不要であると考えるに至ったからだ。


 世は無常にて有為転変ういてんぺん。一時の悦楽に意味はない。


 死によってすべてが失われるのだ。


 愛する者がいようとも、それはいずれ別離となる。


 何もかもがいらない。


 一切を捨て去ろう。


 断捨離だんしゃり、欲にまみれた俗世よ、さようなら。


 そう決心したのだ。


 限界の突破した【開錠】はありとあらゆるものを開く。


 ゆえに、ふと思い至り、俺は自分自身を“開いて”みた。


 そして、気付いたのだ。


 生あるものはいつか死に、形あるものは必ず崩れる、と。


 そう、自分を開くことにより、俺は“悟りを開いた”のだ。



「ただ独り歩め、サイの角のごとく」



 そして、俺は無人の荒野を行く。スキルに頼らない、真の悟りを求めて。



                  ~ 終 ~

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