291.お察し下さい
工作工作
穴開け穴開け
キリキリゴリゴリ
切って開いて
どうなるどうなる
ここ打てここ掘れ
パカパカガパガパ
蓋がゆるゆる
ネジがポットリ
電池がプッツリ
うるさい機械
うるさいお手伝い
そういうの良いから
はやくはやくさ
これ動かないよ?
もう直せないよ?
新しいの頂戴?
もっと欲しいんだ
え?
命?
そうだね
大事だね
だけど今は関係ないよね?
弄ってるだけ遊んでるだけ
大丈夫だって
命は消えない
失敗しても
やり直せるさ
安全安心で寝てれば良いよ
そのうちもっと
上手くなるから
——————————————————————————————————————
「実戦、それも今のあなた方の水準で言えば、極めて危険な戦場。それが近いという話もあり、一つ、大切な教えを授けておく事にします」
日魅在進の脳内世界。
そこに集められた詠訵とニークトの二人。
彼らを前にして腰掛けた絶対者は、ヒソリヒソリと夜の法を説く。
「勿論、浅い層で腕を試すだけであれば、今のお二人でも通用するでしょう。ですが、そうではないのでしょう?」
「うん!私達、どんな敵相手でも勝てるようになりたい!目指すはZ型討伐!完全踏破!」
「………そう、だな………」
詠訵はどこまでも真っ直ぐに、届かなかった“あの日”を繰り返さない為に、強く大きく肯いた。一方で、極端なくらい心を揺さぶる
ニークトは未だ、少女の姿をしたそれに対して、魔法の用意をしていないと、真面に会話する事が出来ない。常に曝露している進は兎も角、詠訵が慣れ切っているという事が、彼からすると信じ難い話である。
しかし、自分で決めて、自分から頼み込んだのだ。
怖いから会いたくない、など通用しない。
だから彼は、震える左腕を握り潰すようにして、同意する。
「良いでしょう。それでは、お二方へ問わせて頂きます」
覚悟の確認が終わり、それぞれ別々の加点によって、合格と見做された。
試験資格有、設問に移る。
「お二方が望む物とは、何でしょう?」
頓智や禅問答でなく、単に質問であると、彼女は先んじて念を押す。
「私は…大切な人を、守れるようになりたい」
詠訵は、あまり迷いを見せずに言った。
「俺は………、俺は、そうだな、人の上に立つ者として、やるべき事をやる」
ニークトは、少し苦心しながら、その形を切り出した。
「な、る、ほ、ど……?」
人差し指で、左右交互に、二人を指し示し、
「そこが、あなた方の不足です。お二人に共通する——」
——
そう言い切る。
「カキン……?」
「傷、って事だろう……」
「些か、限定し過ぎましたね。もう少し、広い話です」
この世の人間の多くが、同じ過ちを犯している。
願いの内容が?
願いの言い方が?
それとも正確ではない?
何らかの嘘が?
そこまでは教えない。
「考える」のは、彼ら定命者の役目なのだから。
そいつはただ、問い続ける。
「考える事こそが、本質です。ですので、考えなさい。あなたが、本当に欲する物とは?」
「宿題です。よおく、お考えください」、
その先に、彼らの進化がある。
ただ体や力の使い方というだけでなく、精神の根本、魔法の形に関わる成長。
その為に何度も自問しろと、そう言っているのだと二人にも分かった。
「考える事が、か」
「じゃあ、カンナちゃん。考える為に、こっちからも聞いていいかな?」
「なんなりと」
「
「………あなた方はそれを、何だと思われますか?」
全智なる者からの、逆質問。
「奴らは歴史にその名前を幾つか残している。そしてその内、現在発生しているとされるものは、10種とされる」
「発生したてで、まだ極秘扱いの物を考えないで、だけどね」
「そのようですね?」
「そこで文献を、奴らに関する記録を改めて洗ってみた」
「ええ、存じております」
右眼の中から見ていたから。
「同時期に出現を確認出来る
最初の
“
「だけど、最初の2体以外は、みんな急に出現しなくなっちゃうんだよね。二つだけ固定で、それ以外は入れ替わってるみたいに」
「同時期に出現する最大数も、時間と共に増加していくが……これは更にスローペースだ。そしてこれが増える時期は、ある事件のタイミングと凡そで重なっている」
乃ち、永級ダンジョンの発生と。
「奴らは
「で、話が戻るんだけど、つい最近になって、同時出現が10種になったんだ。永級10号が現れてから、すぐ後に。これって単純に考えると、イリーガルモンスターって、永級ダンジョンのZ型か——」
——ダンジョンそのもの
「とか、思えちゃう気も、するんだけど………」
「………」
言葉の返事は無く、ただ広い袖の向こうから、そよ風のような笑みが漏れる。
それが肯定か否定かは、分からない。
ただ、手応えはあった。
「悪くありません。皆さん本当に、
その存在が退屈しない程度には、意味を持つ質問だった。
座興に向けるような、縦の緩慢な拍手はあった。
今はそれでいい。それだけで十分な情報と言えた。
「この空間は、もう
「それでは
性的美を賞する事への後ろ暗さを濃縮したような黒影は、そう言って手元に一房の葡萄を生成し、一粒もいで口に含んだ。
どうやらもう何も言うつもりはなく、自らの趣味の時間に戻るようだった。
それを不用意に白けさせた礼は、何でどれだけ返されるか分からない。
故にニークトは気が進まなかったが、それなりの付き合いである、
「おい、」
勇気を振り絞り訊ねることにした。
「そいつ、大丈夫なのか…?」
彼の指の先、その直線上を辿って行けば、無理があるくらいに
「さっきから、声すら聞こえないようだが……?」
「ああ、私の内腿、
「気にせずにいられるか……!?」
それはもう死にかけている、いや、死んでいるという意味ではないだろうか?
「直ぐに蘇生しては天に昇るのを繰り返しているのですから、贅沢な体験が出来て彼も
「そ、うか……?まあ、趣向は人それぞれと言うしな……?…??」
「ええ、そうです。それにこれは、どうしても避けられぬ事態です。私の課題の答えを見つけたと豪語していたのですが、心得違いで得意になっているその様が堪らなく
「………」
「ですので此の様に、
「知らん。そこまでは聞いてない」、とは言えなかった。
「ゴクリンコ………カンナちゃん、それ、めくって顔見ても良いかな……?」
「やめてやれ。いや割と本気でやめてやれ」
流石に尊厳が取り返しのつかない事になる。暴走寸前の詠訵をニークトは全力で制止した。
「お二方も、己の
それは葡萄を掲げるように持ち、その一番下の先端に付いた実を、下から掬うように咥え、顎に力を入れて——
——ぐ し ゃ り
ヒールの下で何かがぺたんと潰れた。
ニークトは更に数歩、脚の間を庇うように、右足を前に出した半身の構えを維持し、そいつから距離を取ったのだった。
「カンナちゃ「やめてやれ!!!!!」
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