287.ガチだこの人ー!?
「ひゅ、ぅぅぅううう…っ!」
立ち合い人として急遽呼ばれた星宿先生による宣誓の儀も済ませ、ブザーによる開始の合図と同時に魔力循環を開始、呼吸を深く速くしつつ体内に第二段階魔法陣を成立させる作業に取り掛かる。
その間に何か仕掛けて来る事も考えたが、何も無い。
ガネッシュさんは俺に合わせ、ゆっくりと準備していた。右の親指と人差し指で丸を作り、掌を俺の方に向け、左手は上へと開き、自らの胸元で両手首を合わせ、
「
その頭が肥大化、アイボリーの象の頭部に変わっていく。腕や足も同色の、より太く分厚いものとなり、頭を前に出して膝を僅かに落とす。
来る気満々ですか?
「ひゅ、おおおぉぉぉ…っ!」
来る気満々みたいですね。
左手が前、右手が後ろのいつもの構え。
魔法陣は作った。
十全!
「いきますよ!」
〈それではこちらも!〉
了承したと見做して即行爆速で地を蹴りその鼻面に足刀「!」反応装甲部爆破によって膝を曲げ足を格納!長い鼻によって搦め取られるのを避ける!危ない!本来ならその点は人体の急所だけど、この人の場合その器官が武器になっている!
そして完璧に呼吸を合わせて来た!俺が踏み出したのと同時機に突進攻撃が始まっている!ダンプトラックめいた“走行”!その進路から横っ飛びに弾ける俺!
〈ほーう!やりますなあ!それが不可視の魔力による防御ですな!確かに触れましたぞ!〉
体の周囲に装甲として展開させていた魔力を使って、ガネッシュさんに轢かれる前に辛くも離脱。
「今の、スタートダッシュ…!」
〈さて、何の話でしょうなあ…?〉
俺が地を蹴るタイミングを見極めた?
いや、何かで察知したのか?
象は足音でコミュニケーションを取るっていう話だけど、もしかして地面を伝わった何かを感知している?
「オッケー。じゃあ一つ、やり方が分かった…!」
地面に伝えなければ良し。
跳躍!ガネッシュさんはそのジャンプを当然のように予測!視線の仰角を取って対空防御を構える、
だろうから俺は魔力を蹴って軌道をずらす!
〈素晴らしい!もう私に対する最適解が導けている!〉
賞賛のお礼に幾つか魔力弾を撃ち込み防御させる。特に頭を集中的に狙い、「そこ!」敏感な鼻が正面からの攻撃を感知、ガードの為に縮んだ瞬間に俺は空中前転で相手を飛び越しながら後頭部に踵を叩き込む!
〈いけません!〉
そこに象牙の
鼻、それが牙を掴んで、抜刀術の如く横一閃。
前からの一発と、背後からの一撃、その両方を斬る水平の
〈ああ…!しまった…!申し訳ない…!〉
俺は一度間合いの外まで逃げ、彼の出方を窺う。
〈お怪我は…?斬ったのは魔力まででしょうか…?〉
「ガネッシュさん…、あの……、それ普通に抜いて来るんですね……?」
〈面目次第も御座いません。つい……!〉
「加熱してしまいました…!」、
そう言ったその人が振るっている牙、あれは月の満ち欠けを由来とする武器だ。最初に触れた敵の部位を「欠損」させる能力を持っていて、下手したら今ので脚を落とされていた。
〈私は魔力をその方の一部と見ている…。それ故に最初の魔力爆破を斬った時点で、効力がそちらを対象に発動したようで…〉
「あ、危ないなあ……」
でもうっかりなら仕方ないよね。
ガネッシュさん?もうそれ捨てて良いですよ?
〈………〉
「あ、あの……?」
〈申し訳ありません、カミザ殿〉
何で謝るんです?今頭を下げられると嫌な予感しかしないんですけど?
〈好奇心がもう…!もう…!辛抱堪らないのです…!〉
「え、は、はぁ……そうなんですか……?」
〈それはもう!誠に勝手ながら!〉
その牙は元に生えていた場所に戻される。大きな耳からはブシュゥウウウ!と音を立てて蒸気が排出さた。
〈魔法によって生成した武器も、可、という事で…!どうか…!どうか何卒…!〉
「……いえ………」
何かもう、それは予想出来てました。言うと思ってました。
〈行きます…!行きましょう…!行きましょうぞ…!行きますぞ…!〉
「……ひゅ、ぅぅぅううう…っ!」
今の何処がそんなに琴線に刺さったのか知らないけど、とにかく諦めて貰うのは不可能そうだった。
(((制限解除ですか。
オーディエンスの無責任は変わらないし!
「ひゅ、おおおぉぉぉ…っ!」
やったらあっ!牙がなんだってんだ!
「
魔力弾幕を張りながら、感覚で相手の攻撃スパンを覚える。
撃ち落とされる中から、欠損の呪いを叩き込まれた魔力を抜き出し、それらが最速で脈拍何回分間隔になるかを頭の中で表にしていく。
そうなれば、魔力で呪いを感知してから、次に欠損攻撃が来るのがいつか、大雑把にだが測る事が出来る!
俺は距離を近づけて行く。勿論魔力を纏いつつ、猛攻の手を緩めず、だ。
呪い、通常攻撃、通常攻撃、戻す、呪い、通常攻撃、戻す、呪い、通常攻撃、戻す、呪い、通常攻撃、通常攻撃、戻す、呪い「ここ!」
俺の前面を払った牙が付け根に収められている最中!そこに刺し込んでやる!〈その為のぉ!〉ガネッシュさんは遂にその腕を使った!丸太のようなそれが俺の接近を遅らせようと下から掬い上げるような肘鉄!広範囲をカバーする事で遅延の打撃に対する盾にもなるが「
〈あなたなら間に合うでしょうとも〉
それはタッチと同時に鼻の先端のスナップによって「投擲」された。
その鼻から投げられた物は確か、決められたルートを辿りながら飛ぶ。
大回りに弧を描いて。
失った前への防御を埋める為、更に攻撃にも使う為に、背中側の魔力の塊は移動され、新たな防御の配置は間に合っていない。
そこに呪いが籠った尖鋭が〈うむム?〉呪いが籠っていない。気付いたかな?まあ気付くか。そこに触れて呪いが戻る確認を待たず最速で投げるだろうから、だから俺の小細工が通用する。
折れた牙の根本に小規模の魔力を挟んで妨害する、なんて小手先が。
〈大きい物に気を取られ過ぎましたか…!〉
「
背後から来た牙を背面魔力噴射と流動防御で受けながら相手の脳天目掛けて
魔力と実体、二段の手応え!
反動で離れ
〈しかし〉
かくん、と、頭が前に倒れた。
違う、上体が前のめりに、
それも違う、
体が二つ折りにされた。
腹部への衝撃で腰が浮き、
“く”の字に曲げられた。
〈こちらも頂きましたぞ?〉
彼の背中から、更に2本の腕が生え、1点に連続して重ね打ち。
1発目で装甲を剥がされ、2発目がみぞおちに。
「ごぼぉっ…!」
吐瀉物と一緒に宙を踊った俺は、背中から壁に叩きつけられた。
〈取り敢えずこの時点で、充分な実りを得たと、言えますなあ〉
「」
〈お付き合い頂き、感謝致しますぞ?〉
「 」
こ、
こきゅう、
が……!
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