163.突然ですが、ここで質問です part2
後から調べた事だが、爆弾が出す爆風も、衝撃波らしい。
爆薬の中では、酸素の発生と、可燃物との反応が起こって、凄い勢いで燃え上がる、んだけど、この反応の伝播がなんと音より速く、それで衝撃波を発しているらしい。
って事は、俺が使う魔力爆発も、単に破裂させてるだけじゃなくて、意識せずに何かの反応を、爆速で引き起こしてるのかもしれない、と考えた事もあった。
魔力がどうやって“爆発”しているのか、と。
それについては、まだ完全に解明し切ってはいないらしい。
魔力が体内から出る時、生体電気の一部を持って行き、使い手が発する“何か”が伝わる事によって、電流が励起し、反応のトリガーが引かれ、爆発現象を引き起こす、と、思われる。
フワフワしてる上に、分からない事だらけ。
が、魔力の発動にも、脳が末端に命令を下すように、電流が利用されている、という事は分かった。
パラスケヴィ・エカトは、それを読み取る事で、魔力的な物も含めた、全ての動作をキャッチできるのだ。
それに勝つには、
これだけの魔力を使えて、
これくらいの電流が
その結果こういう事が起こせて、
という計算を、根底から白紙化させるしかない。
結局の所はシンプルな話。
単位魔力辺りのエネルギーを、強化するしかないのだ。
だからこそ、最終最後の賭けに乗り出した。
体内魔法陣の構築に。
実験で原始魔法陣を形成した時、魔力が制御不能となった。
これは、魔力のスピードが、魔法陣成立と共に急加速する為である。
魔力を体内で回す為の、最低速度でやったとしても、加速に意識が追い着かない。
遅くするのではなく、俺が速くならないといけない。
俺は、脳を活性化させ、一定時間内に処理する情報量を一時的に増加させ、時間の感覚を鈍化する技術を磨いた。
俺は、体内で魔法陣が本格活性化するのはどのタイミングか、それを体に、呼吸で叩き込んだ。
俺は、原始魔法陣状態の魔力が、点から点までどの程度の早さで渡り、どこで軌道を曲げるべきか、痛みによって覚え込んだ。
それでも、止まった状態で、体内魔法陣を維持するのが精一杯で、肉体強化に回そうとすると、また肉や骨を突き破ってしまう。
大会直前、そこまでしか仕上げられなかった。
だから、それは「賭け」だった。
と言っても、どうせ明胤の養護教諭が控えているのだから、肉体損壊なんて、実質リスクゼロだ。
他の全ての技術が、解決策にならないのなら、やらない手は無かった。
結論から言えば、体内魔法陣による身体能力強化を、初成功させる事が出来た。
けれど、ぶっつけ本番の弊害が出た。
敵の攻撃をギリギリで、最小限の動きで回避、そのまま反撃に転じる、という予定を頭の中で組み立て、
一歩横に出て、 すっ飛んでしまったのだ。
強化幅に慣れていないと、毎回これをやるんだなあ、トホホ……
なんて思っていたら、
エカトがそこで完全詠唱を発動した。
キョトンとしてしまったが、ふとしてから気付く。
俺を追えていない。
多分あの詠唱は、より広範囲を探知する為の物だ。
俺が自分の歩幅を測り間違えたように、
彼女も俺の「一歩」が大きく変化したせいで、
行先が分からなくなっているんだ。
俺は脳を酷使し続ける。
どうせ毎晩、カンナにフル稼働させられてるんだ。
数秒を数十秒にするくらいだったら、大した負荷ではない。
前に、踏む。
グラウンドの砂や水が胸くらいの高さまで跳ね上がる。
そこから蹴って、進む。
数mの距離が消えた。
勢い余って感電迷宮にぶつかりそうになる。
急停止。
脚が地面を砕いて5cmくらい沈みこんだ。
試しに魔力の塊を射出してみると、凄い弾速で敵魔法の範囲内を突っ切っていった。
しかも結構な遠くにまで行って、まだ操作可能圏内。
これは、魔力もそうだけど、脳の重過動状態が、思ったより便利なのかもしれない。
さっきから相手の魔力も、それが発する皮膚が泡立つような
骨まで細かく砕かれてるような、そんな感じ。
そんなもの断固として認識したくはないが、けれど勝利に、強くなるために必要な事だ。
目を逸らすな。
「ちょっと痛い」と、「スゲー痛い」と、「死ぬほど痛い」を、選別しろ。
距離感覚を元にして、空間座標に置き換え、並べ直せ。
そうすれば、迷宮の形が分かる。
正しい道順が、見えて来る。
魔力弾を発射。
それぞれ位置につけて、
その中の1個に向けて跳躍!
大電流球体領域に突入!
配置した魔力を爆発させ、その爆風を蹴るようにして高速移動!
あらかじめ決めておいたルートを数秒で辿って彼女の真横に付ける!
エカトはまだこっちを見てない!
俺は拳に魔力を纏い、上を向いてる相手の意識が離れているだろう腹部を思いっきりぶん殴った!
魔力爆発で、衝撃波が発生する。
その場の分子を
彼女の能力で、何も無い空気中に電流を通しているが、それは気圧を下げていて、電子が加速しやすいから。
だけど、もし、更に気圧を下げる事が出来たなら?
その空間を、もっとスカスカに出来たなら?
電子が原子にぶつかって、新たな電子を射出、それが広がって電流を大きくしていく電子雪崩、それが育った姿である雷撃。
その、「新たな電子」を出す為の、原子に、それに構成される気体分子に会う事が出来ないのなら?
放電現象は、
雷は、
不成立になる。
さっきまでは何度か試したものの、俺の爆発ではパワー不足。
充分な真空を作れなかった。
だけど、今俺が使ってる、魔法陣で強化された魔力なら、
破壊されない絶縁状態だって、作れるかもしれない!
そう思って、魔力膜を付加したボディーブローを放ったのだが、
誤算があった。
拳の先、魔力が電流に触れたのを感じて起爆。
ライトイエローの線が、歪み、曲がり、耐えきれず千切れる。
開いた穴を通して本命の一撃が着弾、する前に、彼女の腹部に一度、強い衝撃が入っていた。
そうとは思わず、同箇所に二重の打撲を負わせる事になったのだ。
「爆風が」
彼女からの反撃を躱し、確保してあった退路に乗って外に出る、
その間にも考えていた。
「思ったより強い!」
負圧を作り電流を、彼女の魔法が作る“道”を一時遮断するのに
その高圧は強化された肉体を殴り響かせるだけの余力を残していた。
魔力が発揮するエネルギー量が変わったから?
それとも、爆発する際の反応の速度が更に速くなった?
どちらなのかは分からないが、
どっちでもいい。
今ので分かった。
「
やるべき事が、簡単になった。
彼女の意識が、予測と実際との乖離を、修正し切る、
その前に倒す!
殴って殴って殴り倒す!
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