161．それだけ言ったからには、分かってるんだよな？ part2
「もうムリでしょー？」
正面に本体、
左右に電路、
背後から回転円刃。
「諦めちゃえばあー？キャハ！キャハ！キャハハハハ！」
「そう！かも！な！」
彼女自身からの攻撃が露骨に前側から来るようになった。
触れる事すらアウトなので、俺は後ろに後ろにと追い込まれる。
その先には、落雷
残り少ない手数で、俺はチェックメイトだ。
やるからには、ここしかない。
「前に！」
腕を最大限魔力で保護した上で、本体の側に突っ込む！
意表を突き、最小限のダメージでこの中から「アンタは魔力を感じ取れる」
俺の行動に、完全に合わせて、真ん前に立ち塞がるパラスケヴィ・エカト。
「じゃあアタシは、何が感じ取れるでしょぉー？」
俺が魔力の細密探知を得意とするように、
彼女は電流の——
——体内電気を？
肉体の全ての反応、脳から下る命令、それらは電気信号という形で伝達される。
詳しい思考内容までは読み取れずとも、
何処から何処に電流が伝わった、それを感知出来るなら、
俺の次の行動を、筋肉運動のレベルから分析可能、という事になり、
「アンタ、逃げると見せかけて、電流が示す道は、アタシに向かってた」
俺の意図なんて、
「こざかしー小細工！」
気付いてすぐに腕をクロスしてガード！
その表面から魔力噴射を行い移動方向を反転！
が、防ぎ切れるわけもない！
彼女の手刀が、前になっていた左腕の表面を突いた！
「ガア゛あ゛ッ！！」
一瞬の接触ながら左の体表面が針で空間に縫い付けられたような激痛と不自由！
直後に目の前を雷撃で閉じられる！
脱出の機会が失われ、避けようのない斬撃がそこを狙う！
「ざんねーん！真っ二つ……あれ？」
「ホントに、真っ二つにされるかと思ったよ」
さっき地面から舞い上がる時に、魔力の爆発を利用して、まだ
彼女の手数が俺にとって対処不能になった時点で、そうする予定だったのだ。
電流は俺の体より、絶縁スーツの
それでも結構痛かったが、全身麻痺は避けられた。
彼女は今の攻撃で、俺の意識も脳からの指令も、全てがブラックアウトするという既定路線の元に、攻撃の段取りを組んでいた。
が、俺の体への電流の通りが、思ったより良くない事に気付いたようだ。
もう遅いけど。
「俺が行きたかったのは、」目の前で魔力爆破、からの魔力噴射！「こっちだ！」背中側に自分の身体をぶっ飛ばす！
誤った予測に従って飛来した円刃が横を掠め、そのまま更に離れる！
思った通り、ガラ空きだ。
刃に電路を通して加速させる以上、それが斬る先に別の電流を通してしまうと、干渉し合い、余計な力が加わってしまう。正確な狙い撃ちが出来なくなるのだ。
だから、ここぞと言う時、その通り道からライトイエローを撤去するだろう、そう考えた。
わざと彼女の攻撃を受け、身も脳も動けなくなってしまうと思わせた上で、必殺の一撃を誘発したのだ。
さっきから、彼女は俺を、一定の範囲から外に出さなかった。
つまり、あの魔法の有効範囲は、彼女基点ではなく、完全詠唱発動地点を中心としている、という推測が出来る。
だったら、その中心点から、遠く遠くに離れていく事さえ出来れば、
「射程距離外！」
俺は高圧電流の球形迷宮から脱出！
後を追って来たエカトさんは、俺が外に出たのを見て、詠唱を一度解除。
円刃は落下し地面に突き刺さる。
その上に小鳥のように留まった彼女は、電流路2本で攻撃する態勢に戻っていた。
「はぅ、ハアァァァッー……！ハァーッ……！」
だけど俺の側は、そこからが続かない。
二度目の完全詠唱をさせない為に、攻め立てる、攻め続ける必要があるのだが、
俺にそこまでの体力が残っていない。
深く呼吸をし、代謝を促し、スタミナを回復させるインターバルが必要となる。
簡易詠唱時でさえ、彼女は攻守共に完璧。
なんとか無理に前進しても、切り崩すビジョンが見えない。
よって、この時間は、手立てを、攻略法を見つける事に使う。
ここで見つけるしかない……！
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