153.弱点を、守る急所がやって来る part1
「“
剣の先端を指で挟んで、簡易詠唱。
竜胆色が
俺も屈みながら、魔力の気配を探りつつ、スーツの状態を確認。流石は明胤仕様、防水もバッチシだ。
体内魔力の廻転を改めて最大速に。
これで、いつでも行ける。
「敵
「ですね」
報告から1分も経っていない。
六本木さんが、人形の能力を幾つか同時発動して、水中に生存圏を確保してくれた。
だが呪い系統の魔法効果によって、水は下の階に流れて行かず、その後も俺達目掛け圧力を掛け続けていた。
壁と、解呪、六本木さんが持つ両方を総動員して、それでも辛うじて押し負け、物理的に持たなくなるのも時間の問題だった。
六本木さんの判断は、彼女と俺でお互いを蹴り飛ばし、片方を窓から外に吹き飛ばす、という物。
耐性持ちで連携の肝である、彼女の方を残そうと提案したが、
人形を2体失った自分より、万全の状態で脱出出来る俺の方が、戦術的価値が上だと言って、
六本木さんは俺を逃がした。
彼女の人形は補充に時間を要し、完全詠唱の度に復活する物では無い。
それを考慮しての事だと思う。
俺の手にミーアキャットを握らせ、解呪状態にする事で水中から抜け出させた。
魔法が消える最後の最後まで、彼女は役目を全うしていたのだ。
その後、ミヨちゃんの指令でプランに修正が加わるが、俺とトロワ先輩のツーマンセルには変わりなく、
流石は先輩、ひとっ跳びで来てくれた。
「で、何処?」
「思った通り、教室内っぽいです。1階なので、
メインの校舎の屋上。
トロワ先輩と二人、突入準備。
「2対2、けれど敵は、遠く離れた場所を攻撃中」
「自動的に追尾するように、切り替えられるタイプ、っていう可能性もありますけど…」
「どちらにしろ、今以上の機は来ないわね」
「ですよね、どうやって入ります?」
「窓側?or廊下側?」という意味の質問だったのだが、
「無論、」
先輩はその場で、バレエ舞踊でも魅せるみたいに、左足を軸に時計回りして、
「上から行くわ」
床が抜けた!
「えええええ!?」
「静かに!奇襲にならないでしょ!」
ダイビングのように頭を下にしながら剣の先端で何度も円を描き、
床を、別の言い方をすれば下階の天井を丸くくり抜いて落下!
「もう一つ下よ!気合入れなさい!」
「先輩だって大声出してるじゃないですか!」
2階から1階に潜る!
机に向かっている一人と、壁際に一人!
どっちがどっちか分からないが近かったので机の人の方を——
「“
俺達二人を横から浚う鉄砲水!
ニークト先輩が言ってた、Rポジションの人の能力!
だけど、完全詠唱?
さっき俺達を呑み込み、今ミヨちゃんを狙っているらしい、あの大量の水は、それじゃあどこから出てるんだ!?
Pポジションの能力?あの質量の液体を生成出来る人間が、二人?
しかも片方は、瞬間移動させる能力まであるって言うのか?
「邪魔よ!」
トロワ先輩の縦一閃!ではないな。同じ範囲を複数回切りつけて波を割っている!
はぃぃぃい!???「波を割っている」!?
「どうして流体にそれ出来るんですか!?」
「あ、あららのら…?」
ほら相手さんも引いてるよ!
「ただの水流ならまだしも、魔法よ?一人の人間が生み出した、一つの力。私の傷痕は相手の魔力にも刻み入れる事が出来るのだから、一度斬ってその形が崩れる前にもう一度斬れば良いだけ」
あの、トロワ先輩。それもしかして、解説のつもりですか?魔法効果を上げる為に、相手との認識の共有のつもりですか?
意味分かんないですからね?
一欠けらも納得感が無いから、多分効力変わりませんよ?
「ま、まあいいわ…。どっちみち包み込んであげるわよん…」
二方向に逸らされた
円形に囲みつつ動く方向が一方に統一され廻転に、“渦”になる!
「先輩!あの人まだ制御を離してません!」
「そうでしょうね。全部で一塊と捉えているでしょうし、飛び散った程度で操れなくなるとは思ってないわ」
その中で魔力の
何か来る!
一歩退いた俺の目が見たのは回りながら通過する金属棒!椅子の脚だ!
それは飛んだ先で流動の一部となって見えなくなる!
更に固い物が折れ砕け、窓ガラスが割れた音!
「この魔法、教室内の物を呑み込んでます!」
「津波って、水圧だけじゃなくて、こうやって巻き込まれた瓦礫による破壊も脅威、らしいわよ?」
「この急流の中に武器を大量に取り入れて、それを使っての攻撃もして来るって事ですか!」
「さて、どうしてやりましょうか」
「トロワ先輩、少しだけ相手の注意を惹けます?」
「馬鹿にしないで頂戴?」
迫り来る内壁に自分から近付いた先輩は、
「惹くどころか引き裂いてあげるわ!」
その動線とは逆方向に
開いた傷口から外に飛び出して座ってる方を狙いに行く!
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