153.弱点を、守る急所がやって来る part2
水の防護膜らしきものを纏いながら止めに入る敵
「潮の流れ!月に引かれた海水はあっちこっちヤンチャして、」
切りつけられて生まれる竜胆色のラインが乱れ飛び見えなくなる!
「止まることなく波立つもの~!同じ軌道を二度なぞらせるなんて、させないわよん!」
「なら、」
頭から
右手からは短く反り返った剣、カトラスで、
攻撃を繰り出す彼女に対して、
「点で行けばいいのよ」
トロワ先輩はまず左手に剣を持って蛇頭を斬り崩し、
柄で相手の右手を打ち、
その反動でレイピアを突き刺す!
「ぐっ…!」
それだけで僅かに防御を貫かれた彼女だったが、
その体表に竜胆色が一つ!
「あなたの水流の方でなく、身体との位置関係で、固定出来たわね」
「まだよ…、まだまだよん…」
左手に小さな斧を持ち、傷を付けられた右半身は引く。
消極姿勢には理由があるが、
「逃がさないわ」
トロワ先輩にそれは通じない。
右回りで潜るように踏み込み右手に持ち替えたレイピアの先で狙いを定める!
距離関係を狂わせようと半歩離れてカトラスを防御に構えた彼女、
を見た俺はトロワ先輩の後ろを抜けて座ってるヤツをハードル跳びの動きで机を超えながら蹴り飛ばす!
「いたた……!」
「あ、あれあらあれっ!?どこからよん!?」
トロワ先輩が開いた出口を通らなかったから、
俺は俺で、動態魔力感知と動体視力強化を使って渦の内側を見通し、最も物にぶつからない場所を見つけて、そこを突き破って脱出していた。
先輩に頼んだのは、他の場所に穴を穿とうとして、相手の防御と注意力のキャパを誘き寄せる事までだったけど、何か自分なりのやり方で出て行ってしまった。
だったら力を合わせるべきだ。
先輩ならきっと、1対1でなら互角以上の戦いをしてくれる。相手が守勢に回って、自分が別の誰かを守っているという意識さえ忘れかけた、
その隙を見せる時が、
千載一遇のチャンスが、
巡って来る。
その考えは「当たってた!」
そいつは吹っ飛びながら勢いを利用して距離を取ろうとしているがジェットで詰めて追撃に入る!
「beat!」蹴り飛ばして味方から離してやる!「beat!」もう一撃!角の掃除用具入れに追い詰めた!扉も開けずに中へ蹴り入れる!
「いたい……!」ひしゃげる金属!捻り出されるダメージボイス!折れ裂ける自在箒!飛び出すバケツ!そこにもう一度
「“
「うわぉぉおおおっ!?」
ゆ、
床が!
床が波打って
盛り上がって
俺を
押し出して
押し流してくる!
「ボウヤ、それはダメよ?女の子はもっと、丁寧に扱わないとネ?」
教室の出口!向こうの代表だった、
濡れているのは——
その背中越しに見えた、破れた窓が答えだ。
この人は確か、水中、と言うか、水を得る事で運動性能が高まる。
さっき
Qポジション到着!
間一髪、助けが間に合ってしまった!
「いらっしゃい!オシオキよ!」
腰を落とした姿勢で手招きする辺泥先輩!
その能力は、波を生み出し操る事!
タイルを曲げ千切りながら床がうねり、くねり、俺を押し返して
俺は天井まで高度を上げ、薄い部分を貫通してやろうと——
これは、
なんだ?
気配だけで、火傷するような、
熱?日射し?
いいや!
「トロワ先輩!水から離れてくださ」ーーーーーーーーーッッッッッ!
耳鳴りが、俺の警告を弾け飛ばした。
俺が上に行く事も、予定通り?
いや、どっちでも良かったのか?
全身を痙攣させる衝撃。
染め上げる閃光。
一部が気化する
——こ、これが……!
俺は魔力を頼りにトロワ先輩を抱えて窓から飛び出す!
——これがそうか……!
だけど、外の地面も壁も、またしても俺達を閉じ込めようと迫る!
今のは、放電だ。
膨大な電気エネルギーが、塞がり切っていない天井の穴から降り注ぎ、教室中に撒かれた海水を伝って拡散し、それでも尚保有していた、目を潰す程の余剰分を放出した。
それとも敢えて、光に変換される割合を、多くしたのかもしれない。
「ダサダッサー!モロじゃん!モロ貰いじゃん!モノモライィー!」
回復してきた聴力に、上から捨てられる嘲笑が入る。
「目と耳は残ってる?残ってるよねー?それくらいの肉体強化は、イケてるでしょー?こんなんで終わりじゃ、いくら何でもツマンナー!過ぎだよねー!」
大きな
八志教室の
パラスケヴィ・エカト。
魔法の特性上、陣形に生まれてしまう穴を、彼女が直々に埋めに来た。
大腸を守る為に、脳と心臓がセットで来るようなもので、とんでもない愚行、とも言い切れない。
彼女の強さが、この構図を、“本末転倒”の例題にさせない。
「せいぜい逃げ隠れしてくださ~い!ザーコ!ザコローマン!ザッコ~!」
俺達を追って、辺泥先輩とシエラ先輩が
トロワ先輩は、たぶんまだ五感のどれかが万全ではない。
膝を突いて、立とうとしている途中だ。
なんとか、俺一人で——
「あー!そう来るよなー!もー!」
波が更に狭めて来た!
逃げ道はおろか、足の踏み場も与えないようにと!
二人同時包囲圧殺攻撃を前に、
俺には為す術も無かった。
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