115.個人的な修行その1 part2

「すいません、耐久度を見誤りました」

 

 俺は頭の上にあった切れ目に指を掛け、メリメリとC型を裂いて二つに割った。

 

『えぇ…』

『当たり前みたいな顔してC型を素手で破るな』

『ススム、どうなってる』

『生まれた?』

『普通に怖い事やるな、ススム』

『舐めプか?』

『2窓するの面白いなこれ』

『あ、あの、今食べられてたように見えたんですけど・・・』

『イリュージョン!だね!ススム君!』


「えっと、さっき投げたナイフが、貫通しました。こいつが僕に届いた頃には、魔力の流れが無くなってて、思ったより簡単にやられてしまった事が分かり、その……ご臨終です……」


 本当はここから、密着距離での戦闘を、お見せしたかったんですけど………。


 ここのC型は、衝撃吸収力が強く、叩かれてぺったり押し延ばされても、あまりダメージを受けない。

 なので、打撃はやめた方がいい。刺突は悪くないけど、それ以上に斬るのが速い。

 蔦もそうだし、本体も繊維に沿って入刀すれば、割とすんなり受け入れてくれる。

 

 また、ジャンピング攻撃において気を付けるべきは、C型自体が着地する前に、口を開けて液を吐き出して来る所だ。


 避けるのが一番良いのだが、今回は「こういう対策もあるよ」と、魔力を纏わせたナイフを投げて見せた。

 液攻撃を真っ向からぶち破りつつ、やいばのダメージが有効だとアピールする、一石二鳥のアクション、だったのだが、


「うっかり三鳥目、C型の命まで打ち落としてしまいました………」


 こっから外皮をどうやって剥がしていくかとか、どの辺を切り取ると致命傷なのだろうかとか、触れてはいけない相手に素手で殴り勝つには、どう戦えば良いのかとか、そういう事をススナーさんと一緒に、考察しながら検証を進めようとしていたのだけど……。


『草』

『触れた物を壊してしまう哀しき怪物かな?』

『怖過ぎるwwwww』

『ススム、配信にそいつの腹の中を乗せたのは、たぶんお前が初めてだ。誇れ』


「ま、切り替えていきましょう。この先にも、まだまだ全然居るでしょうし。ちょっと他のモンスターも混じるのが面倒ですけど、これも修行の一環です!」


『あっ・・・』

『ストイックに虐殺するのやめろ、ススム』

『実験動物を探すマッドサイエンティストの眼』

『C型逃げてー!それ以外も逃げてー!』

『おしまいだ…もうだめだ…』




 こうして俺は、更なる配信のネタモンスターを求めて、“地盤餐マザー・バザー”のより奥地へと向かった。


 以下、ダイジェストでお送りいたします。

 dieジェストかもしれないけど。



「あ、見てください。そこに隠れてるの分かりますか?よーく見て待ってると、我慢できなくなったのか、蔓を伝った液が、床を打つ音が聞こえてきますよ?カワイイですねー」



「で、この辺りが多分、分泌腺なんだと思いますけど…。あ、やっぱりですね。凄い量を噴射してます…あ、こら、暴れるなよ…!お…?ここ、この付け根辺り、この辺を強く踏んでやると、末端の動きが鈍くなりますね。命令系統が上手く伝達しなくなるのかな?」


 

「それでは、ちょっと逃げる準備だけして、試しに血を一滴食わせてみますか。かなりの回復速度と強化幅を誇るらしいですが、この剥き身の状態から、何秒くらいで完治するんでしょうか?あ、ススナーの皆さんは真似しないでくださいね?止血帯があっても、傷口からバイキンとか入る可能性がありますから」

 


「おっ、スゴイな。蔦を伸ばして、味方を引っ張って来ました。ちゃんとそういう、連携めいた事が出来る辺り、モンスターっていうのは不思議で一杯ですねー。折角来てくれた所アレなんですけど、今は邪魔なんで、ちょっと手早く処理するやり方でも解説しますか」



「——っと、このように戦えば、安全かつ速やかに、C型ベジトを倒せます。このダンジョンに苦手意識をお持ちの方も、これで万事解決ですね?今は人が少なく、穴場となっておりますので、ディーパーのススナーさんは是非、実践してみてください!」


『ヒェッ…』

『俺達を地獄に巻き込むな、ススム』

『いやです』

『許してください』

『ススム、お前が本物のモンスターだ』

『チャンネル登録したので見逃してください』

『ススム、お前変わっちまったな…』

『この変わり方は想定されてないんだよなあ・・・』


「何でみんな、僕を怖がるんです?何で僕をそんな目で見るんです?僕は正常ですよ?ねえ?おかしいですよね?その態度。もっと自然体で行けますよね?」


『はい、ススムさんは素晴らしいエンターテイナーです』

『はい、ススムさんは完全に正常です』

『はい、ススムさんが考案した「流星返し」は最強の技です』

『ススナーの訓練されたノリすこ』

『訓練(意味深)』

『「真理」に目覚める配信』

『お前は新規を掴みたいのか追い出したいのかどっちなんだ』

『ススム、完全に理解したから俺だけは殺さないでくれ』

 

 コメントの反応と連携が良かったから、ちょっと悪ノリし過ぎたな。

 あんまり無意味なグロを入れちゃうと、敷居が高くなるから、次回からは、もうちょっとやり方を工夫しよう。


 やっぱギア共かスケルトン君達か?

 バリバリの非生物の方が良いのかな?

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