49.爆上がりの後に急降下、と言うか乱高下 part2
(カンナアアアアアアアアアアアアアア!?)
(((うわ、
(く~ちゃんが!く~ちゃんが居る!!く~ちゃんがそこに実在している!!!?!?!)
(((当然、居るでしょう。架空の人物だと、思ってたんですか?)))
(あ!あー!直接的に!直にあったまる~!!!)
(((だからその気色の悪い言い回しは何なんです?)))
(きっと何らかのイオンが出てる!プラスの!陽電子みたいなのが生成されてる!ゼッタイ出てる!!)
(((だとしたら大問題です)))
え?俺これどうすればいいの?どういう顔してればいいわけ?すっごい見られてるけど見られたところで俺にどうしろって言うわけ?誰か正解を教えて?どうして欲しい?俺このままだと死にかねないよ何で話し掛けられたのまったく分からな「ね、ねえ、大丈夫かな?」
「はい!ダイジョブです!」
俺は慌てて起立する。
反射的に直立状態を取ったが、指一本動かせそうにない。なんか失礼を働いたら、大ダメージを負いそうだ。勿論俺が。
「も、もう…!スス、えっと、カミザ君ってば。そんなに畏まらなくて良いんだよ?“同級生”!なんだから」
「はい!大変光栄です!よろしくお願い——あれ?」
俺の奇行にもにこやかに対応してくれる彼女に、性格の良さを感じつつ、ふと疑問に思う。
「俺の、名前、知ってるんですか…?」
「そりゃそうだよ。有名人でしょ?少なくともこのクラスで、知らない人居ないんじゃないかな?私も配信で、何度も話題に出しちゃった」
あなたがそれを言いますか?というのは置いといて、確かに、顔も名前も知れてるのは、今更である。
が!そういう事じゃない!
あの“く~ちゃん”に!“くれぷすきゅ~るチャンネル”に認知されている!それこそが最大の問題なのだ!
あー!でも、そう言えば!
この前く~ちゃんの配信の切り抜き——配信映像の一部を抜き出した動画——で、「カミザススムに興味を示している」、みたいなのが出回ってた気がする!その件で俺の配信にも、ヨミトモ——“くれぷすきゅ~るチャンネル”ファン層の総称——と思わしき、釘を刺すようなコメントが出没してたんだった。
最近は配信をフルで見れていなかったから、言及の頻度とか把握してなかったけど、実は想像以上に、関心を持たれていたのだろうか?
ご自分の影響力分かって下さい!死んでしまいます!!勿論俺が!!!!!
(((うるさい…、十点減点……)))
「あ、ごめんなさい!自己紹介が、まだだったよね?私、
「あ、はい!改めて、日魅在進です!以降オミシリオキを!」
「もう、そんなに固くならないでってば。敬語もやめよう?」
「え゛?」
そんな!いきなり丁都タワー並みのハードルを跳べって言うんですか!?
「いや、そ、そんなこと言われましても…」
「………」
何そのプイーって顔と態度。そんな事しても可愛いだけなんですけど?
が、このまま無視されるのもあまり良くない。俺の近くに滞留し続けると、悪評に巻き込まれる可能性まである。その程度で彼女の名声に傷は付かないと思うが、ファンっていうのは些細な懸念で、夜も眠れなくなるものである。
ええい、ままよ!南無三!
「じゃ、じゃあ、よ、よろしく。詠訵さん」
「………名前は?『さん』付けのまま?」
「ゴムタイな!?」
「………」
ああ!また堅守態勢に!
「こ、これからよろしく、よ、よみ、ち………」
「まだちょっとぎこちないけど、うん!ごうかく!よろしくね!カミザ君!」
なんかそっちは「君」付けなの不公平じゃない!?という不満はあったものの、俺から要求する度胸は当然無く、互いの二人称はそれで決定となった。
「そ、それじゃあまた」「ね!ね!見たよ!あのA型初討伐!と言うか、D型討伐の時も見てたんだけど」
おぅっとお?詠訵さんンン?話続けますかあ?
周り見えてます?凄い事になってますよ?目を白黒させてるのと、なんかもう腰浮かせて、殴り掛かる寸前に見える人も居ますよ?嫌われてる人間に、まるで助けるように歩み寄るっていうムーブが、どれだけ危険か理解して?
「よ、詠訵さん…」
「つーん」
「よ、詠訵…!ちょっと…!」
「どうしたの?」
「あんまり俺と話すの、良くないんじゃない…?」
「?どうして?」
「ほら、イメージとかあるし、変な噂とか立てられたら、活動に支障が…」
「私は仲良くなりたいなー、って人に話掛けてるだけで、どうしてそれが不祥事みたいになるの?」
うわあああ。本人が善性の人過ぎて、捻じ曲がったゴシップとかの可能性を考えてない!知名度に反して無防備過ぎる!異性同士が配信外で会ってただけで、男女関係を疑われるような世界ですよ…!?
他人から避けられてる男に救い主のように現れ、至近に顔を持って来て呼び捨て強要、しかも会話を打ち切らせる気が無いとくれば、これはもうゲスの
当事者の俺でさえ、一瞬勘違いしたもん!「え?この人俺の事好きなの?」って!
本人としては誰にでも優しいだけなんだろうけど!お立場という物を考えて下さい!
「私と友達になりたくなかった?」
「滅相も無い!」
「プッ、それは敬語、なのかな?アウトかセーフか、判定に迷うね?…フフっ」
く~ちゃんがどうとか以前に、大前提として、「友達になりたい」と言ってくれるのは、本当に嬉しい。もう一生有り得ないシチュエーションだと思ってたから、本来だったらストレートに喜びたい。
だが、それが“くれぷすきゅ~るチャンネル”に放火したい、不特定多数の誰かにとって、着火剤になってしまう。それをこそ危惧しているのだ。
だけどここまで歩み寄ってくれているのを拒むのは、く~ちゃんの善意を
「な、なんて言えばいいのかな…、俺にとっては本当に、心の底から、ありがとう、なんだけど…」
「じゃあ問題無いよね!それでさ!一つ聞きたい事があって!」
凄い。こんなにも猪突猛進な子だったとは、配信を見るだけでは、見るだけでは………?いや?結構そういう感じだったか。回復と中距離攻撃使えるのに前衛希望な時点で、何かおかしい感じではあったし。
ああ!なんか今誰かが席を立った!限界か!我慢の限界か!どうやって収めるんだコレ!?
「D型と戦った時、なんで」「あのさ!詠訵さ」
「おい!ここにカミザススムとかいうザコローマンが居るだろ!オレサマの前に出せ!」
ただでさえ近いお顔が更にアップになり、
クラスに蔓延する苛立ちがピークに達したことで、詠訵の質問を遮る形で爆発し、
更にそれを吹き飛ばす怒号が教室の外から襲来した。
(………カンナ)
(((何ですか?)))
(俺、どこ見ればいい?)
(((素直に、最後の
まあカンナはそう言うよな!だって最後のが一番厄介事に発展しそうだもん!
俺は恐る恐る、詠訵の肩越しに、入り口に仁王立ちする、デカい男を見た。
「そのスカスカで下品な悪臭!鼻が曲がりそうだ!お前だな!この
はいそうです、という返答すら聞く気が無いように、だらしなく太った体を揺らし、のっしのっしと入室し、詠訵を押し
「出て行け!お前は!この学園に相応しくない!」
「ごめんだけど、ちょっと休憩させてくんない?」
疲れ切った俺は、ついつい敬語フィルターすら通さず、
本音を口に出してしまった。
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