赤服の訪れ

刻堂元記

赤服の訪れ

静かなるとき、雪の降る時。

山々に雪化粧をこしらえ、大地に冬をもたらす時期。

寒空の向こうより現れるは、そりを引く2匹のトナカイたち。

乗るは赤服の男、持つは贈り物が入りし大袋。

海越え、空駆け、陸過ぎし末に訪れる。

待つは、寝れど眠れぬ幼き少年少女、数多に上り、

今か後かと心躍らせ、

果ては姿見ようと音立てせずに、耳澄ます。



されどされど貰えぬ、見れぬ。

何がと申すは言えぬもなしに、赤服去りて

眠りし子の元、訪れる。

開くな、聞くな、音立てするな。

良きならば守りし褒美に、嬉しき嬉しき贈り物。

良からぬならば、贈りは無しにまた今度。

泣くも喚くも無駄とて御免。

惜しく時間は過ぎ去りて、朝の来るまで

帰ればならぬ。



さりとて余りし数ある物は、

福運なりて、良き子の寝床に届け置く。

起きて気づくは、贈り物。1つにあらずの贈り物。

嬉しき悲鳴聞こえるか。

朝になりとて分かり得る。されど朝まで居られるぞ。

寝顔見れしは充分で、

空袋しまいて元の所へ戻らんと。

そり引き、そり引き、走ればそこは、

赤服住むとこ違いなし。



くたびれくたびれ眠気を抑え、

赤服脱ぎ捨て、寝床へ前へ。

時は同じく、鳴くは2匹のトナカイか。

腹空き、力なくして休めんぞ。

待てど落ち着け、落ち着かせ、

戻りて来るに、腕には餌が。

抱え下ろし、あげようか。

餌与え後に、朝になれども構わぬが、

少し休ませ、良き願い。



寝るは早朝、起きるは悲鳴。

子の出す声は、

嬉しき故か、悲しきか。

怒るは自分に、見直す心。

改まり次第は、また来年。

次はどうか、その次は。

楽しさ忘れず、消さずに保て。

さすれば次も、届け置くため訪れようぞ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

赤服の訪れ 刻堂元記 @wolfstandard

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ