7.隠し要素と謎の混沌煮込み
「ニューゲート……ニューゲート……。やっぱりどれだけ検索しても出てこないな……」
ログアウト後、俺は攻略サイトや掲示板でニーナの言っていた事を調べ始めた。
エタブルは隠し要素が多く、サブアカウントを作れない都合上ネット上に書かれている情報の真偽を確認しにくい。
攻略サイトや掲示板には参考になる情報も多く載っているが隠し要素やクエストを受けるためのフラグ行動、解明されてない職業についてはデマである事も多いので、プレイヤー達の真偽を見極める目とガセネタに踊らされる覚悟が必要だと攻略サイトが注意喚起しているくらいだ。
加えて、俺の体を治した一件のようなシステム外の謎まであるときた。
「エリアアリシアについてはデマっぽいの含めて書いてる人がいるな……。運営のバグ残し説……五つの天災への手掛かり……メインクエストとの関わりは不明でエンドコンテンツ説……エンドコンテンツって何だ?」
麦茶を飲みながら調べてみると、いわゆる本編クリア後のやりこみ要素の事らしい。
エタブルの世界ユークロニアは五度の天災によって滅び、モンスター達が
プレイヤー達はそんな世界でまだ見ぬ人類圏を取り戻しながら、この世界の痕跡を辿っていくというお話なのだが……
「エリアボスとかストーリー上のボス達とは別に五度の天災がモンスターとして登場するって考えるとこの説はありえない話じゃないよなぁ」
エリアアリシアという隠しエリアの存在についてはプレイヤーも周知らしく、情報も色々と載っている。
何らかのフラグを建てないとそもそも入れない、スクリーンショットが撮れない、エリアで公開される情報も隠し進行度によって変化する、他にはキャラメイクが生体スキャンだった場合だけ、女キャラしか入れないけど女装したら入れる、隠れ職業だと見つけやすいなどなど……情報の真偽はともかくとしてこうしてプレイヤーに語られるくらい周知はされているようだった。
そして、このゲームのプレイヤーにとって隠し要素にはとんでもない価値がある事も改めて理解する。トップクランですらまともに情報を拾えていない状況だ。
「やっぱりニューゲートってのは隠れ職業なのかね……」
ニーナの反応を見た感じ、隠しエリアを発見しやすくなるみたいな探索系の職業なのかもしれない。
それなら俺が入ってきて驚いたのも説明がつく。溺れかけてまでアイテムの無い川底を調べるやつなんて、流石にゲーム始まって一か月でするやつはいないだろうし…
……いや、それとも。
「隠し要素じゃなくて……」
――俺の体が治ったような謎がまだ他にもあるのか?
そんな事を一瞬考えて、今日の所は眠る事にした。
翌日、俺はもはや日課のように昼からログインした。
平日の昼間からゲームするのは最高だな。……学校はどうしたって?
いや違うから。まだ入学手続きが終わってないだけだから。
長年入院生活だったので院内学級と通信教材しか経験が無いから通うのが少し楽しみではあるが、こうしてゲームできる時間が減るかもしれないと考えると面倒にも感じるのが本音である。
「あれ?」
俺がログインすると昨日ニーナと別れた場所とは別の場所にいた。
ニーナと出会ったエリアアリシアだ。周りは砂浜の静かな空間で目の前に広がる池の中心には昨日見たのと同じ小屋がぽつんと建っている。
「おかしいな、霞みの森の木の上でログアウトしたはず……なんだけど……」
エタブルはフィールドエリアでログアウトするとキャラの情報がそのまま残り、見つかるとモンスターからたこ殴りにされるが、俺は(登攀)スキルのレベル上げをしている時に霞みの森のモンスターは木の上で静かにしているプレイヤー発見できない事に気付いていた。このエリアでは視界に入ったプレイヤーと音でしかプレイヤーを発見できないのだ。
だからニーナを町に送った後にセーブしてトレントでも狩ろうとまた戻ってきていたはずなのだが……?
「もしかしてこのエリア……リスポーン地点になってるのか?」
だからニーナもあの場所にいたのか?
いやニーナはそもそもリスポーンを嫌がってたから戦ってリスポーンしたって事はないはず。
一か月もの間レベルも上げずに霞みの森とグラニア渓谷をくまなく調べていたマメさといい、ここを調べていた時に偶然鉢合わせしてしまっただけと考えるのが妥当か。
なにより、ここがリスポーン地点だと言わない理由が謎過ぎる。別に言ってもいい情報だろう。
……いや、それよりも気になる事が二つ。
「デスペナルティってのがあるんじゃなかったけ!? アイテム無くなってないか!? ボーナスポイント剥奪されたりしてないか!?」
俺は慌ててステータスとインベントリを確認するが、インベントリは例の如くパンパンのままだしボーナスポイントにも変化はない。
あれ? と思ったが、ステータスをよく見ると状態異常として「死の淵からの帰還者」というデバフが追加されている。これがデスペナルティと見ていいだろう。
体が動きにくいのとパッシブスキルの適応不可……病み上がりみたいな状態という事だろうか?
経験値やアイテムが奪われるより全然ましか、とほっとする。
だがはっきりとデスペナルティを確認した事で、もう一つの気になる謎が俺の中で膨れ上がった。
「ちょっと待て……俺は何のモンスターに殺されたんだよお!? 初リスポーンが謎ってそんなんありか!?」
いや不用意にフィールドエリアでログアウトした俺が悪いのはわかってる。わかってるけども……ニーナと違って別にリスポーンは恐くないし気にもしてないが何をされたのかは気になるだろ!
「戦闘履歴みたいなの残って……ないか! 接触したプレイヤーの履歴しかねえ! それもニーナしかいないけど!」
ギャーギャーと騒ぐ俺の視界にノイズが走る。
無音のこのエリアだからこそ際立つザザッ、という雑音と視界不良。
ヘッドギアの不調か? それともバグか?
俺のそんな平凡な疑問を打ち破るように、目の前にそれは表示された。
・クエストアリシア「望郷のアフェクシオン」を開始しますか? はい いいえ
偶然見つけた隠しエリアに戻されて現れたウィンドウには表示される謎のクエスト名。
何がフラグになったのか俺が何にやられて何故出てきたのか条件はわからない。
だが、このゲームにほんの少しだけ歓迎されている気がして……俺は口角を上げながら選択した。
はいといいえのどちらを選んだかって? そんなの決まってるだろ?
――――
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