第5話
スマホを二台持ちしているなんて話を一度も聞いたことがなかった。別に二台持ちがそれほど珍しいわけでもない。けれど、彼女には何か俺に秘密にしていることがあるんだと、そう感じた。
俺は不気味さを感じつつも、まだ鳴り止まないスマホを探すために机の前まで来た。彼女の部屋はとても簡素で、最低限のインテリアが揃っているだけの部屋だった。
着信音は止み、再びかかってくることはなかったが、どこから音が聞こえていたかは大体わかっている。きっと引き出しの中だ。
そのときの俺も正常な判断ができなかったのだろう。一度感じた不気味さを取り払うことなんてできなくて、躊躇いなく引き出しを開いた。
そこには俺の知らないピンクのスマホがあった。彼女のスマホは確か……白だった気がする。スマホを手に取ると、その下から身分証が出てきた。
こういうときの嫌な予感というのは、どうして当たるのだろう。そんな風に思った記憶がある。
身分証に記載されていた名前は──
『
彼女とは別の名前が記載された身分証が出てきたのだ。完全な別人であれば、まだ良かった。身分証に載っていた顔写真は、俺のよく知る彼女だった。
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