第4話

 彼女が用事で、家を空けたときがあった。リビングでテレビを見ながら、暇を持て余していると、彼女の部屋から着信音が鳴り響いていることに気がついた。

 俺のスマホではないし最初は無視したのだが、再度かかってきたので、俺は彼女の部屋の方へ向かい、ドアノブに手をかけたときにある忠告を思い出した。


『お互いの部屋には無断で入らないようにしようね。見られたくないものもあるだろうし』


 同棲を始めた日に、そんなことを言われた。今思い返すと、あのときの表情は血の気が引くような、そんな表情をしていた気がする。

 俺は別段見られて困るものもなかったし、どちらでも良かったけれど、彼女がそう言うのならそうしようということで、部屋に勝手に入るようなことは今まで一度もなかった。


 俺はその忠告を思い出し、ドアノブから手を離したが、着信音は鳴り止まない。緊急性を要するものだったら、なんとかして早く彼女に知らせた方がいい。俺はそう思って、罪悪感を抱きつつも再度ドアノブに手をかけて、部屋に入った瞬間、今度は俺のスマホが鳴った。


 電話に出ると、彼女の声が聞こえた。


『宅急便を受け取っておいて欲しいの──すぐに帰るね』


 そんな内容だったと思うけれど、正確には覚えていない。だって、スマホを忘れていったはずなのに、から電話がかかってきたのだから。

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