第2話

霧島和きりしまのどか、23歳です。地下アイドルやってます。あ、このことは、オフレコでお願いします』


 俺の隣に座っていた彼女は、おしとやかに挨拶した。落ち着きがあって、大人びた印象だった。彼女に対する印象は、悪いものではなかった。


 俺はなんて自己紹介したっけな。確か──


黒崎元くろさきはじめです。今年で30になります。ADやってます』


 こんな簡素なものだったと思う。


 最初は何人かが話しかけてきたけれど、すぐに興味は俺から移った。彼女を除いて。

 いつものパターンか、と内心不貞腐れそうになっていた俺に、彼女は常に話しかけて来ていた。俺が何か言うと、とても嬉しそうに、ニコニコしながら話してくれていた。アイドルだから笑顔が上手いんだろうな、ってそのときは思っていた。


 後日、連絡先を交換していた彼女の方から『また会いたいです』というメッセージが届いた。何かの間違いかと思ったが、間違いでもなんでもいい。もう一度彼女と会うことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る