【番外編】 第十六話

チームCに完勝をしてから、俺たちチームDは順調に勝利を収めていった。先輩たちだけで組んでいるチームBにもなんとか勝利した。そして、今回の選考の最終戦。

俺たちチームDと透真がいるチームAの最終戦が始まる。


俺たちチームDのフォーメーションは後ろから3-2で、センターバックには間中くん、右に波多野くん、左に俺。フォワードの左には権田くん、右には渡辺くんが位置している。


対するチームAのフォーメーションは後ろから3―1―1で、センターバックには朽木先輩、右には神田先輩、左には角田先輩、ボランチは透真、フォワードには松本先輩が位置している。六人目の飯塚先輩はコート外で、ベンチに腰をかけている。


校庭の乾燥した土の上には陽炎が揺れている。

肌を焼く日差しがじりじりと体力を奪っていく。


そんなまだまだ夏が残っている陽気であったが、俺たちがいるコート内はどこかピリリとした寒気を感じさせる。


ふとポジションに着く前に透真と話していた時のことを思い出していた。


「先輩たちと組んだ透真がどんなプレイをするのか、滅茶苦茶楽しみ!!」


「といっても、昨日組んで、さっき二十分だけ一緒にプレイしただけだけどな」


「けど、点を決めたんでしょ?もう馴染んできている証拠だよ!!」


「まぁ、そうかもな。とりあえずお互い頑張ろうぜ」


透真は俺が差し出したグッドポーズをちらりと見た後、透真はポジションに着くために離れていった。

その時、透真の口角が上がっていたのがわかった。


かなりの自信があるのだろう。負けてはいられない。


そして、二十分間にわたるチームA対チームDのミニゲーム開始のホイッスルが鳴らされた。キックオフは俺たちチームDからだ。


「行くぜー!」


渡辺くんは後ろにボールを蹴ると、相手のゴール前に向けて走り始めた。松本先輩の横をすり抜け、ボランチに位置する透真の目の前で右側に通り抜けていった。流石は渡辺くんだ。すごい速さで敵陣を切り裂いてくれている。


透真も渡辺くんを自由にさせてはいけないと思ったからか、渡辺くんの後ろに付いていっていた。


「出せ、間中!!」


その声と共に、渡辺くんは急に後ろを振り向き、間中くんは渡辺くんにパスを出した。


「早速だな。けど、ここからは何もさせないぜ」


「やれるもんならやってみな!!」


透真と渡辺くんの掛け合いが聞こえた気がした。

渡辺くんは右の足裏でボールを止めて、後ろから迫る透真を左手で抑え込んだ。膠着状態が二秒だけ続いた。しかし、俺もそれをずっと眺めているままではいられない。

波多野くんが透真の横を駆け抜けたのを見て、俺は自陣に残る。


「角田、波多野をマークしろ。松本は若林と挟め」


朽木先輩の低い声が響き、松本先輩が透真と渡辺くんの元へと駆けつけてくる。透真が渡辺くんの左後ろから、松本先輩が渡辺くんの前に回り込んでいる。


だけど、渡辺くんは左手でぐんと透真を押しのけ、右側に駆けてきている間中くんにパスを出した。


「松本、後ろから間中が来ている、止めろ!」


と、朽木先輩が言うよりも早くボールに届いた間中くんは、一度トラップすることなく、ダイレクトでゴール前に目掛けて放物線を描く柔らかなパスを出した。

シュルルルという後ろ回転が掛かったボールに朽木先輩と権田くんが駆けつけていたが、空中で先にボールに触れたのは朽木先輩であり、朽木先輩のヘディングでコートの外へと弾き出されてしまった。


惜しかった。

だが、やはり先輩だ。簡単に突破できるわけはない。


「惜しかったぜー。この調子でいこうぜ!」


と、渡辺くんが手を叩いた。

そうだ。あと一歩だったんだ。

けど、俺は今の流れに入り込めていない。

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