【番外編】 第十五話
チームA対チームB、チームC対チームDのミニゲームを開始するホイッスルが鳴り、校庭の中でサッカーボールを蹴る音が二つ、同時に響いた。
こちらのコートでは俺たちからのキックオフだ。渡辺くんがボールを後ろに蹴り、間中くんがそれを受けた。それと同時に右サイドを波多野くんが駆け抜けて行く。
逆サイドの俺はそれを見て、少し後ろに下がった。波多野くんが前にあがっていくことで、守備が手薄になってしまうためだ。
「……ナイス、二人とも」と間中くんが小さく呟いた気がした。そして、間中くんは波多野くんに視線を向けたまま、ノールックで渡辺くんに低く速いパスを出した。
「よく見ていたな」
渡辺くんはニヤリと笑うと、後ろに背負っていたチームCの二人を両手でグイッと後ろに押し込むと、低空飛行するボールに向かって駆けた。
そして、くるりと反転すると同時に、自然な流れでボールを止めた。
「うまッ!」
俺は思わず呟いてしまった。
攻撃的なポジションの選手がボールを受ける時、基本はまず前を向くことだが、それは意外と難しい。相手の守備が強固なものであるほど難易度は上がるし、相手に取られないように速いパスを出されることが多いため、難易度はさらに跳ね上がる。
それを当たり前のようにできてしまう渡辺くんはやはりすごい。
そして、そんな渡辺くんはボールの少し斜め前に左足を踏み込むと、右足を振りかぶった。
「くっそ」
シュートモーションに入った渡辺くんの前に黄色のビブスの一人が立ち塞がった。しかし、渡辺くんはそれを気にも留めずに、ボールの右斜め後ろを掠らせるように右足を振り抜いた。
ゴールよりも少しズレた方向へと飛んでいったが、急激に回転が掛かったボールはまるで生き物のようにチームCの二人を避けて、ゴールネットに突き刺さった。
「ッシ!!」
渡辺くんは右腕を上に掲げてから、下に降ろして喜んでいた。
きっとかなり練習していたのだろう。喜びが抑えきれないようだった。
そこからチームCとのミニゲームは俺たちの優勢がずっと続き、四対〇が最終スコアでチームDが勝利を収めた。
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