【番外編】 第十四話
「若林は朽木くんのチームに誘われたらしいな」
部活を終えた放課後に、いつもの公園へと向かっている最中に渡辺くんからそう言われた。
俺も十数分前に透真に確認を取ったばかりだったが、噂話というのは広まるのが光の速さだ。
俺はこくりと首を縦に振ると、渡辺くんは頭をがしがしと掻いた。
「くっそ、羨ましいッ!!」
朽木くんは少し嫌だけど、と付け足して、奥歯を噛んでいた。
そんな渡辺くんに俺もほぼ同意見だ。本当に羨ましい。
透真が入ることになったチームには、かなり豪華な先輩たちが揃っている。
朽木先輩を始め、三年生がいる時からスタメンで大活躍していた右サイドハーフの覇者、神田先輩と不動のワントップ、松本先輩。そして、正確無比なクロスをあげる角田先輩に、いつも俯瞰して冷静な判断をしている飯塚先輩。
そんな先輩たちと一緒にプレイができる透真が羨ましい。
「けど、若林も先輩たちもまとめて、ブッ倒せる。そう考えると、燃えて来た」
渡辺くんはニカッと笑った。
そして、俺と渡辺くん、間中くん、波多野くん、権田くんの五人はいつもの公園に辿り着いた。透真がいない状態で、この四人と自主練習をするという異様な状況に戸惑ったが、それでも俺にできることが何かあるはずだ。
部活での練習、渡辺くんたちとの自主練習、自分だけでの自主練習。
全てを全力でこなした。
また、時間を見つけてはプロサッカー選手の試合を観た。確かに先輩たちの動きは参考になるが、プロサッカー選手の動きを真似していく方が自分には合っていると思ったからだ。
そうしていく内に時間はあっという間に過ぎていき、一軍を選考するミニゲームの日がやってきた。
「これ。僕たちのビブスだってさ」
先輩に渡された、と間中くんは綺麗に積み重ねられた緑色のビブスを差し出してきて、一枚だけ取るように言われ、俺は感謝の言葉と共に緑色のビブスを受け取った。
そして、崩してしまうのが勿体ないくらいに綺麗に畳まれた緑色のビブスを身に纏い、俺はあたりを見渡した。
他のチームもビブスを身に纏い始めており、透真たちのチームは赤色のビブスを受け取っていた。
確か赤色のビブスがチームAで、俺たちが受け取った緑色のビブスはチームDだったはずだ。チームに振り分けられたアルファベットやビブスの色には特に理由などはないはずだが、やはりAやBというアルファベットが振り分けられた方が強そうに見えてしまう。
「集合!!」
富澤主将の掛け声で、武井監督の前に整列した。
俺たちが武井監督に向けて挨拶をした後、武井監督はバインダーに視線を落とした。ミニゲームの対戦の組み合わせを発表するようだ。
「まずは左側のコートでの組み合わせは、チームAとチームB。右側のコートでの組み合わせはチームCとチームDだ」
初戦はチームCが相手か。
俺はちらりと黄色のビブスに身を包んでいる五人を見た。俺たちと同じで一年生だけでチームを組んでいる。正直に言うと、負ける気は全くしない。
その自信は渡辺くんや間中くんが同じチームだから、という理由だけではない。
俺もこの数日間で力を付けたという自負があるからだ。
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