私の個人主義 夏目漱石

周囲の正しさというのは、必ずしも自分の納得するところへの道筋ではないかもしれない。そうなれば、自分の持つ興味を知り、それを軸に深めていく姿勢も大切だ。

人生を何に投じるかを、自分の心の内から沸き上がるものによって選び、探究していくことが大切だ。


問い 無し 本の解説動画で知ったため


曰く、人の後追いばかりして、納得できず、迷っているのであれば、ひとつ、自分のつるはしで、鉱脈を掘りあてるまで、すすんでみなくてはならない。


かの文豪も、文学の道を志したものの、大学での講義に意味を見いだせず、迷い続けたらしい。その悩みの答えは、自分の感覚を信じることだった。

ヨーロッパの批評家の意見にどうにも納得できない。だが、その批評は世間では有力であり、自分の気が引けてしまう。

そこで、彼は考えた。有名な批評家と自分の考えの矛盾を明らかにすることに意義がある、と。

そこから、哲学の書物を読み、自分の思想の立ち位置を探したらしい。そして、至ったのが、彼の言う自己本位だった。

彼の立場としては、西欧化に対する批判ではあるが、社会の風潮に対して、自分の考えを持ち、向かい合うことは、現代でも、さらに言えば個人の生き方を考える上でも大切なことなのではないだろうか。

自己本位のありかたを見つけてからも、衣食のために、やりたくない仕事をやったようだが、思想の基盤がしっかりしていたことで、乗り越えることができたらしい。

何かに惹かれるものがあり、こだわりがあるのなら、納得するところまで探究していくしかない、と、そう言っているようだ。


また、権力と金についても言及している。

権力は他人に自分の個性を押し付けるようなもの。お金は他人を自分におびきよせるようなもの。そのように書いてある。

力のあるものが、他人を、自分の感性の世界にひきずりこむことは、他人をむやみに傷つけることである、と。

自己本位で生きるということは、何より自分を尊重すると共に、他人の個性を尊重するあり方なのだと言っているようだ。


自分は権力や金とは、縁がない。それを使って他人と関わることなど、およそ考え付かない。

ただ、小さな優劣というのは、人にはあって、相手の意見をまるで無視することは、あるのかもしれない。自分もそうやっていたのだろうか、などと考える。自分の場合は、他人から尊重されない、と感じたことが思い出される。どうしても、他人の意見の方が優先されるべきなんじゃないかと、気が引けたことが思い出される。こんな自分にこそ、自己本位というあり方は大切なのだろう、と思う。自分はどういう人間でありたいという気持ちをもって、日々の暮らしぶりを決めることは、大切なのだと思った。

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