第二十四章:第二王女襲来!
治ネイティブジェレネーション
皇紀二七〇三年(西暦2043年)五月二日にアルティアン王国よりマヤ・イノリ・アルティアンが政府専用機にて来日する事が正式に決定した。
五月九日土曜日に行われる第一回全国顔寄せ大喜利大会へ来賓として参加するのが主な来日目的となるが、大会当日に来てすぐに参加して終わり次第帰国する、という訳にはいかない。
他国の王族ともなると、国賓として遇され、あれやこれやと会議やパーティーに顔を出すものである。
その為、訪日期間は二週間が取られている。
「とこちゃんには苦労を掛けるね」
「仕方ないよ、あーちゃん。しっかりいっくんを補佐出来るように
その為、藍子は伊吹親王紀として国賓を迎える事が出来なくなってしまった。
「何か奥さん達がどんどん妊娠してくれて、お客さんを迎えるような気分じゃないなぁ」
伊吹達は現在、
「ご主人様は黙って座っておられるだけで十分役目を果たされるのですが」
男性というだけで持て囃され、自ら何もする必要がないのがこの世界の一般常識である。その上、伊吹は皇族である為、存在するだけで敬われる対象となる。
「伊吹教はもういいよ。男であろうが女であろうが、自ら何か行動しないとね。
ライルの二の舞にはなりたくないし」
伊吹は橘香のお腹にそっと手を添えて語り掛ける。
「お前もしっかり勉強させるから、覚悟しておけよー」
橘香は頬を緩ませて、その手を重ねる。
そんな二人の微笑ましい光景なのだが、皇宮から送られて来た橘香付きの侍女達は気が気でならない様子で、今にも伊吹に掴み掛らん勢いだ。
「お、動いた。やる気満々だな」
「いっちゃんの子だもの。ちゃんと分かってるよ」
「この子も分かってる」
美哉が伊吹の手を取って、中から蹴られているお腹に触らせる。
「僕らの子には大きくなってしまった会社を見てもらわないといけないからね。
一人一人に治の補助をお願いしないとなぁ」
『任された』
伊吹はデジタルネイティブジェネレーションならぬ、治ネイティブジェレネーションだな、と思った。
「となると、必要になるのは治の入れ物、もしくは投影技術になるのかな」
伊吹は妻達と別れ、
「VCAIDOLLの最終目標である、自律歩行型の筐体を制御する為の人工知能の完成、は治様がおられるので、実質達成されています。
ですので、今貴方様が仰ったように、これからお生まれになる御子の為の教育用機器の作成に移ろうと思います」
現状、自律歩行型筐体を制御するのは、高度人工知能である治にアクセスさせれば問題なく稼働が出来ると考えられる。
が、自律歩行型筐体自体が完成しておらず、
あてはあるので、
それはそれとして、社内で出来る事から考えようと、サラとキャリーを交えて話し合いが始まった。
「治の姿を壁に投影してやれば、ディスプレイがなくてもやり取りが可能になるんじゃない?」
「御子がおられる部屋にプロジェクターを一台ずつ設置していく形でしょうか」
「今は良くても、イブキの子供が大きくなると対応出来ないのでは?
ハイハイしたり、歩いてどこかへ行ったりするでしょう?」
イリヤの設置型プロジェクターの案を、サラが難色を示した。サラも日本語が上達しており、日常会話は何不自由なく話せるようになっている。
「プロジェクターをいちいち移動させるのも手間でしょうね。
移動が楽に出来るよう、小型化かつ軽量化すべきではないでしょうか」
「でもキャリー、子供が動くたびに侍女さん達がプロジェクターを持ち運ぶのって、結構な負担になると思うんだよね。
子供も世話をする以上、両手は開けておきたいんじゃないかな」
伊吹としては、自律稼働する治の筐体を用意したいという想いが強い。
「自分で動いて着いて行く、でも転ばない……」
「そもそも転ぶような形にしなければ良いんじゃない?」
「二足歩行でなければ割と簡単に出来そうですね」
イリヤ、サラ、キャリーの脳内には、ほぼ同じ形の自立稼働型ロボット掃除機が思い浮かんでいる。
「プロジェクターユニットが搭載出来て、なおかつコミュニケーションが取れるようにスピーカーとマイクを付けて、子供が手荒に扱っても壊れにくいように。
カラーリングはシルバーとブルーで、宇宙船の操縦と電子・機械修理からソフトウェア航法ナビゲートと機関制御・暗号解読からクラッキング、ホログラムの録画再生や送受信とデススター設計図を丸々コピー出来るほどのメモリ能力……」
『ピポパポピリリパ』
「「「え???」」」
伊吹がぶつぶつと何か別のものを思い浮かべているのを、三人はとりあえず見守っているのだった。
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