第二十三章:大喜利合宿と大会開催準備
限定生配信:町村浪漫の大喜利合宿一日目
マチルダが
複数回に渉る生配信番組「大喜利よ今夜もありがとう」を通して、番組へと大喜利の回答を送って来た大喜利武者達を選別し、マチルダの目から見て大喜利というものを理解していると判断した人物にのみ声を掛け、今回の限定生配信での大喜利合宿が開催される事となった。
この合宿に参加しているのは千人で、これでもかなり人数を絞り込んでいる。
五月に予定している横浜国際総合競技場での第一回全国顔寄せ大喜利大会への出場者は百人を予定しているので、さらのここから十分の一に絞り込まなければならない。
「配信前の待機人数が千人って事は、全員揃ってるって事やな。ほな始めよか」
マチルダがVCスタジオの技術スタッフへ声を掛け、マチルダの姿を捉えるカメラによって、
「さて皆さん。大喜利しよか。
画面の前で副社長や治や
けど、戦い続ける覚悟があるんやったら別や。
副社長のそばで、自分が大喜利で輝けると思うんやったら戦え。
人を笑かすってのはホンマに難しい。
ただただアホな事を言うたらええんと違う。
頭を
自分こそが世界一の大喜利武者やという覚悟がないもんは今のうちに出ていけ。
戦うて決めたなら中途半端な事はすんな。
全力で答えろ。
自分の回答が一番おもろいんやと信じて疑うな。
ほな、ええか?
始めるで」
さすがに転生者であり、見た目よりも精神年齢が高いマチルダとはいえ、千人分の回答を全て見て判断するのは非常に難しい。
配信スタジオ内には日々マチルダからの薫陶を受けているクリエイター集団が控えており、大喜利の回答を確認し、これはと思った回答がマチルダの手元のディスプレイへと送られる仕組みになっている。
≪飲んだら乗るな、みたいな事を言って下さい≫
町村浪漫が表示されている画面の上に、字幕で大喜利のお題が表示される。
「お酒を飲むんやったら車には乗るなって事やね。まぁ解説するまでもないけど。
これは簡単そうに見えて難しい、奥が深いお題かなぁ」
マチルダが話している間に、すでにクリエイター集団の手元ディスプレイに合宿参加者からの回答が次々に寄せられていく。
「ほな気になったヤツを読み上げていこか。
『寝るなら呼ぶな』、大学生の友達の家に行ったんか?
『明日なら降るなぁ』、雨の話?
『豚ならハムな』、しゃぶしゃぶでもええやろ。
『神棚見るな』、完全に語感だけやけどまぁええかな。
『死んだらナムな』、手と手を合わせて、ナームー。
『山寺カーな』、童謡の夕焼け小焼けかな?
『ニャンなら猫な』、せやな。
『餅なら二個な』、お雑煮に入れる個数?
『行く、奈良
『オチならないが?』、いやオチないんやったら喋んな言うてるやろー!」
マチルダが読み上げた時点で、その回答をした大喜利武者には得点が付与される。
合宿は土曜日と日曜日の二日間で行われ、一日目である今日の段階で二百人に絞られる。
二日目の最後のお題が終わった段階で得点の多い上位百名が第一回全国顔寄せ大喜利大会への出場が決定する。
合宿とは銘打っているものの、実質予選大会である。
「はい、お題の回答受け付けを打ち切りました。
じっくり考えたら誰かて一つや二つおもろい事が思い浮かぶやろけど、あくまで競技やから早さは重要やで。
パッパパッパと思い付いたら回答、思い付いたら回答てしていかんと。
けど数だけいっぱいあっても、おもろなかったら意味ないしな。
まぁそこらへんは上手い事やってんか」
お題の合間合間にマチルダが大喜利のコツや回答の出し方などについて、大喜利武者達へ助言をする事で全体の底上げを図っている。
伊吹もマチルダも、大喜利大会は一度だけでなく、年に一度必ず開催される大会にしたいと考えているので、合宿参加者の大喜利力を上げる事も目的のうちなのだ。
「では続いて行きしょか」
町村浪漫の上に表示されていた字幕が変わる。
≪
「ただ教えて下さいって言われても普通に考えたらアカンで。面白いまたは興味深い答えやないと。
例えば、そうやなぁ。投稿済みの動画の副題が『ろくろ首丸結び作戦』やから、妖怪繋がりとかやと考えやすいかなぁ。
『子泣きじじいくすぐり作戦』とか『
千人の大喜利武者達が眉間に皺を寄せて頭を働かせている前で、マチルダが次々と模範解答を挙げていく。
さすがにやり過ぎであると判断した番組担当ディレクターがスケッチブックに「模範解答出し過ぎ」と書いてマチルダへ見せて止める。
「ついつい言い過ぎたわ、スマンスマン。
ほな、回答見て行こかぁー
『浪漫の口にマロン詰め詰め大作戦』、いやゴメンて。
『金髪筋肉をトンカチで殴り続けたら死ぬ死ぬ作戦』、いやさすがにやり過ぎやろ。
『町村浪漫の中の人を暴くべく、我々探検隊はアマゾンの奥地へと向かった』、方向性が違い過ぎるがな!!」
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