生配信:実録風映像の作り方解説

「はい、突然ですが生配信を始めます」


≪早速のご対応ありがとうございます≫

  ≪やったぜ≫

    ≪今から巨大地下空間行くんですか???≫


 顔をドット絵のお面で隠した副社長が画面に映る。狩衣姿ではなく作務衣の上に半纏を羽織っている事から、本当に急遽生配信を始めたのであろう事が窺える。


「えっと、『凄絶震撼映像せいぜつしんかんえいぞうヤバすぎ!』についての問い合わせがねぇちゃんねるにもYoungNatterヤンナッターにもなぎなみ動画のコメントにもいっぱい来てて、ちゃんとした動画を撮影して投稿しようと思っていたんですが、あまりに反響が大きいのでとりあえず先に生配信しとこうと思い立った次第です」


 ≪ありがてぇ≫

   ≪私も動画撮影してなな動に投稿して副社長に雇ってもらうんだ≫

      ≪動画投稿しても雇われはしないのでは≫


「『ヤバすぎ!』の撮影の舞台裏映像を撮ってますので、これはこれで後日公開しますね。

 伊地藤いちふじ玲夢れむがセリフ間違えるとことか八軒はちけん葉月はづきの手から金属バットがすっぽ抜けてガラスが割れたとことか一ノ瀬いちのせ睦月むつきが転んでカメラ壊したとことか全部公開しますので」


 ≪全部言っちゃったwww≫

   ≪結構大変そうだな……≫

    ≪むっちゃんが壊したカメラはいくらくらいのですか?≫


「睦月が壊したカメラの値段は……、五十万円くらいだそうです」


 ≪うわぁ≫

   ≪むっちゃんアイスクリームとは訳が違うんだぜ???≫

     ≪胸がひゅんとなるな……≫


「ただ、私が半ば無理やりお願いした形なので彼女は悪くないです。

 あのカメラも結構重たいのですし、初めての撮影なのでね。

 皆さんが撮影される際はスマートフォンで十分ですので、周りに十分気を付けて撮影して下さい」


 ≪撮影の方法は分かるのですが私達でも安藤家あんどうけを映像の中に合成する事は可能なのでしょうか?≫

   ≪あ、それ気になる≫

     ≪え? 私達が勝手に安藤家を出演させても良いの???≫


「良い質問を頂きました。ありがとうございます。

 スマートフォンで撮影した動画をまずなぎなみ動画へ投稿します。この時点では未公開の動画という扱いです。


 その動画を、なぎなみ動画の有料会員向けの画像編集ソフトを使って加工していきます。このソフトはクラウドサーバというVividColorsヴィヴィッドカラーズ子会社が管理しているサーバを使って作動していますので、特別に高性能なパソコンがなくても加工可能です。


 ただ、同時に多くの会員が作業していると待ち時間が発生したり、インターネットの接続環境によっても処理速度が変わったりしますので、ご自分のパソコンの性能が高い場合はクラウドサービスではなくローカル環境での編集の方が快適になると思います」


 ≪なな動だけで編集加工が可能だけど、自分のパソコンの中でやった方が早く終わるよって事か≫

    ≪自分のパソコンの中であきら様に触れられる、ってコト???≫

       ≪自分のパソコンにショタきゅんを閉じ込められる???≫

   ≪おさむ様が入っておられるパソコンを抱き締めて寝たい≫

    ≪英知えいじ様を小さなサブディスプレイに常時表示している私は天才です≫


「えっと、説明の途中なんだけどちょっと気になるコメントがあったのでそっちを確認させて下さい。

 小さなサブディスプレイで英知を表示させてるって子猫ちゃんは、なな動の動画を一時停止して画面保存した画像を表示させてるって事でしょうか?」


  ≪わわわ私ですか!?≫


「そうです、今は貴女しかコメント出来ないように設定されているので、落ち着いて入力してもらって大丈夫ですよ。

 あ、お時間大丈夫ですか?」


 ≪大丈夫です!≫

 ≪えっと、副社長が仰ったように≫


「うん」


 ≪生配信の、じゃなくって、≫


「うんうん」


 ≪副社長と社長の結婚披露宴の時の、おめかしされてた英知様がカメラ目線になったところで一時停止して≫


「あー、あの時の」


 ≪それを保存してサブディスプレイに全画面表示させてます!≫


「そうなんだ」


 ≪あの! ダメだったでしょうか!?≫


「えーっと、厳密に言うと、良いよって言う事は出来ないと思います。ただ、その画像を人に渡したりネットに公開するのはダメです。個人的に楽しむのは……、良いよとは言えないって感じですね。

 ただ、子猫ちゃん達が望む物を私達が提供出来てなかったって事が今分かったから、絶対に止めてねとも言い辛いな、と思ってます」


 ≪ダメじゃないけど良くもないって事ですね……≫


「でも、貴女はそれを私達に教えてくれたので、何らかの形で報いたいと思います。

 そうだなぁ、例えば、デジタル写真立てを開発してデジタル写真集をそこに表示出来るようにする、とか。

 一枚だけを表示する事も出来るし、時間経過で写真が自動的に変わるようにする事も出来るし、動く写真を表示する事も出来るかも知れないし」


 ≪欲しい! それ絶対買います!!≫


「もし本当に発売するとなったら、貴女には提案料として製品を差し上げますよ」


 ≪本当ですか!?≫


「もちろんです。開発を開始するにしてもしないにしても、スタッフから後日連絡を差し上げるよう手配しておきますね。

 あと、貴女だけがコメント出来る設定を解除しますね。他の子猫ちゃんの反応も知りたいので」


 ≪はい、ありがとうございました!!≫


「ありがとうございましたー」


 ≪デジタル写真立て欲しいです!≫

  ≪写真立て買います!≫

     ≪四つ買って四兄弟並べます!!≫

  ≪副社長最推しなんですけど副社長の写真も発売して下さい!!≫

    ≪真智ちゃんに日替わりで色んな格好して欲しいなぁ≫

 ≪等身大の写真飾りたいので大きなデジタル写真立ても作ってほしいです≫


「おぉ、結構反響がありますね。

 これはさっきの子猫ちゃんには製品をプレゼントするだけじゃ足りないかもな。

 今スタッフが調べたところ、デジタル写真立て自体はもう製品化されているようなので、そちらの企業様へ連絡してVC仕様の特注品に対応出来るかどうか確認します。

 もう動き出してますので、そう遠くないうちに皆さんのお手元へ届けられると思います。

 が、それも大事だけど、写真集も大事ですよねぇ」


 ≪狩衣姿も良いけどスーツ姿も見たいです!≫

   ≪車の助手席に座ってるところとか!≫

      ≪ご飯を食べてる写真欲しい、一緒に食べてる気分になれるから≫

  ≪メガネ掛けて本読んでるところとか良いと思います≫

    ≪膝枕してあげたいです……≫


「膝枕か……、なるほどなるほど」


 ≪いや膝枕されてる写真なら分かるけどしてあげるのは無理では?≫

  ≪いや、副社長なら、副社長なら叶えて下さるはず!!≫

    ≪ちゃんとコメントを読んで考えて下さるだけでもありがたや≫


「おっと、話が逸れに逸れましたね。

 えっと、実録風映像の作り方について説明します」

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