祝百五十万PV記念SS:安藤家夢の国立競技場大会

 東京、国立競技場。


 夕暮れに染まる会場内には安藤家あんどうけのファンである安藤子猫の五万五千人がそれぞれ推しの色のサイリウムを掲げて、その時を待っている。


 会場の照明が消え、メインディスプレイに映像が流れる。そして聖火台に安藤治あんどうおさむあきら英知えいじ翔太しょうたの姿が現れる。


 大砲を打ったかのような爆発音が会場内に鳴り響きお決まりの音楽が流れてカウントダウンが開始される。

 四人は聖火台下に設置されたジップラインに着用しているハーネスを取り付ける。子猫達が野太い声でうりゃおいという掛け声を発してサイリウムを前後に振る。

 子猫達が見守る中、ジップラインで会場内をぐるっと一周してステージそばに降り立った。

 四人がジップラインからハーネスを外し、ハーネスを脱ぐ。そしてスタッフからマイクを手渡される。


 カウントがゼロになり、ステージに四人が立つ。四人がそれぞれ四方へと笑顔で手を振る。


「来たぞ国立ぅー! 盛り上がって行くよー!!」


 翔太が開口一番、ニャニャニャフ達を煽る。そして、彼らのデビューシングルのイントロが流れる。




「って感じのライブしよっ」


「いや、安藤家はCDデビューしてないが?」


「ええやん、とりまインディーズデビューから目指そうや。

 代々木公園でチラシ配りながらお客さん集めてやな」


「いやいや、まず五万五千人の前で一人四役出来ないのよ」


「背格好が似てる女スカウトしたらええねん。踊りが出来る子やったら問題ない、マイクの代わりに人参持たせて口パクさせよ。

 カメラ越しやったら安藤家が歌ってる風にリアルタイムでも合成出来るやろ?」


「出来るだろうけどやっちゃダメなヤツ。

 あと国立競技場のステージに立つのに最短でも五年は掛かるでしょ」


「そこは安藤家の力があるんやから二年くらいで何とかしてや」


「二年で二十六曲作って収録するのは無理だって」


お侍さんが言った、めないで、ニューエイジ英知ショウタ翔太イム!」


「歌詞に名前入れるヤツ!? 無理やり過ぎるって!!」


「あと二十六曲だけちゃうで、多分三十五曲」


「さっ!?」


「ライブは二日間やし一日目と二日目で全く同じ曲て訳にはいかんしなぁ」


「…………」


「あ、一日目に誕生日のお祝いせんなんしイブイブの誕生日に合わせなアカンな。

 七月二十一日か、あっついやろなぁ」


「安藤真智のパリコレ参加は?」


「へっ!?」


「あと世界各国のジャパンエキスポにも招待されるだろうね、VividColorsヴィヴィッドカラーズ所属のモデルだから国賓レベルの待遇でおもてなししてくれるんじゃない?」


「いや、うちは……」


「コスプレ衣装で可愛いポーズ決めて何百何千のカメラで撮られるだろうな、フラッシュで目が眩むかも」


「ひ、ひぃっ……」


「……ちょっとは僕の気持ち、分かった?」


「分かった! 分かったから許して、うちには無理やて!!」


「僕も割と無理して頑張ってるんだ、ちょっとは気持ち分かった?」


「え、ノリノリでやってるやん。子猫ちゃん達メロメロにしといて無理してるてそれはないやろぉ」


「そうだ、映画を撮ろう! 殺し屋のオジサンに恋する少女役と遠くてすごい昔にあった銀河系の惑星の女王役を探してるんだけどどこかに良い白人美少女いないかなぁ!!」


「ごめんて! 勘弁してやぁ!!」



★★★ ★★★ ★★★



次話から新章へと移ります。

今後ともよろしくお願いします。

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