皇宮にて報告
昼食を摂った後、伊吹は
ついでなので、
対
伊吹が直接顔を合わせ、礼を言いたいと申し出たところ、皇宮で非公式に面会する事となったのだ。
「事の詳細を聞いたが、えげつない方法を取ったな。人妻を寝取って夫を裏切らせるとか、AVかと思ったわ」
「否定出来ないんだよなぁ。しかもそれを進言したのが自分の妻なんだから、ホントこの世界にはまだまだ驚かされるよ」
話に上がった智枝は何の反応も示さず、部屋の隅に控えている。
内閣官僚が集まる時間より少し前に皇宮へ着いた為、たまたま時間があった
「ライル・サンダースは二度と表舞台に立てないな。
それより、橘香ちゃんはその後大丈夫なのか?」
「うん、しっかり検査してもらったから問題ないよ。
それより美哉のつわりの方が酷いみたいで、橘香が甲斐甲斐しく世話してるよ。他の侍女が看病すると申し出ても、自分がしたいからって聞き入れないらしい」
伊織が京香へ目線をやると、京香が深く頭を下げた。
「お互い初孫だな」
「そう言えば、アメリカでは転生者の事を賢者って呼んでて、積極的に受け入れる家と排除する家に分かれてるって聞いたんだけど、俺が転生者であるってバレて不都合なかった?」
「今さらかよ……。
各国からそれなりに嫌味を言われたりしたが、今回の騒動でアメリカ以外は儲かったからな。
それで黙らせられるんじゃないか?」
伊織の口ぶりから、伊吹は世界各地に転生者が存在している事を理解する。
そして、知識や技術を持っている者は
「お父様はもう分かってるかも知れないけど、これからは転生者の取り合いになるぞ。
俺は運良くAI開発者を引き込めたけど、さらに進んだAI開発の知識や技術を持っている転生者が現れたら、それだけで世界がひっくり返る恐れがある」
元の世界でキャリーや伊吹やマチルダ、そしてイリヤよりも長く生き、より技術が発展した世界を知っている若者が、これからどんどん生まれて来る可能性がある。
その時、現在世界を統べている既得権益を持つ者達は足元をすくわれるかも知れない。
「AI開発ってそんなに簡単に出来るもんじゃないだろ? 伊吹だって
既得権を持つ者が転生者を取り込むって流れはそうそう変わらんと思うぞ」
危機感を募らせる伊吹を伊織が宥める。
「それに、男の転生者ってのはそう簡単に生まれないだろうよ」
「それもそうか。ただでさえ百分の一でしか生まれないんだもんな。
その中でどれだけの確率で転生者が含まれるかと考えると、そう焦る必要もないかも知れないな」
その後も転生者についてのやり取りを続けた二人だが、伊吹が伊織へ聞きたかった事を思い出す。
「お父様、カーペンターズの曲って覚えてる?
アメリカ人の女の子に歌ってもらおうと思ってるんだけど」
「んー、何曲かは覚えてると思うけど、アルバム一枚作れるか作れないかじゃないかな」
「カーペンターズに限らず、思い出せる限りで良いからギターで弾き語りして撮っといてよ。このスマホに登録された『なぎなみ動画』のアプリから投稿してくれたら俺らしか見れないように限定公開されるから」
伊吹は伊織へ渡そうと用意していたスマートフォンを取り出して渡す。
「時間があったらな。覚えてるかどうか分からんが、俺は一応皇太子だからな?」
そんなやり取りをしていると、皇宮勤めの侍女が二人を呼びに来た。内閣閣僚が揃ったようだ。
「そうそう、今回の戦争の勝利を祝って、公式に訪日したいって国がいくつかあってな。目的はもちろんお前だ」
「公式で会うと言われても、何すれば良いんだ? ただ会ってニコニコしてるだけならいいけど」
二人は案内する侍女の後ろを歩きながら、会話を続ける。
「ニコニコしてるだけで相手が満足する訳ないだろ?
北欧の王族と面会して、気が合えばそのままベッドへゴーだよ」
「え、マジで言ってる?
皇族の精液ってそんなに簡単に海外流出させていいのか?
それに向こうの王家だって皇族の血が混じるのは困るんじゃないか?」
北欧にある国々は、男性が激減した原因であるウイルステロの震源地から近い為か、世界でも特に男性が生まれる確率が低い土地となっている。
「あちらはなりふり構ってられんのよ。あくまでスペア扱いではあると思うがな。
ちなみにお前の異母妹も何人かいるぞ?」
「うわー、知りたくなかったなぁ。お父様は洋ピン好きかも知れないけど、俺は日本人じゃないとダメなんだよなぁ」
「誰が洋ピン好きだ!
まぁ、嫌いではないが」
これだけ気の合う親子なのに、本当に出会ってそれほど時間が経ってないのだろうか。二人のバカ話を聞かされ続けた侍女はそう思った。
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