サラ・トランス
デイヴィッドの父であるライルが訪問した日からバタバタと忙しく、日課である鍛錬が出来ていなかったのだ。
「よろしくお願いします」
伊吹が師匠でもある侍女の
「オネガシシマス!」
そう叫びながら伊吹へと向かって来る金髪女性。その女性が迫って来る勢いを殺さず、伊吹が彼女の胴着を掴んで膝車をかける。
女性はすぐに立ち上がり、再び伊吹へ取り着こうと腰へ目掛けて手を伸ばす。が、伊吹が上手くいなして払い腰をかける。
女性は上手く受け身が取れず、畳の上で仰向けに倒れた。
「サラ、準備運動しないと危ないぞ」
伊吹に向かって来ていた金髪女性はサラ・トランスだ。伊吹の手と口と腰によって屈服させられ、ライルと
アメリカ政府がサラの証言を全面的に認めた為、逃げ隠れする必要がなくなったので亡命の件は一時凍結されている。
「オネガシシマス! コダネ、クダサイ!!」
サラは立ち上がり、再び伊吹へ立ち向かおうとするが、周りの侍女達が拘束して、無理やり座らせられる。
英語を話せる侍女が、まずは準備運動をするように言い、サラはそれに従った。
「屈服したというより、肉欲に溺れてるだけのような気がするんだけどなぁ」
サラは外務省で身柄を保護されていたが、ホノルル会談が無事終わったと聞き、私を
担当者がここでしばらく待機するよう伝えると、サラは出される食事に一切手を付けないというハンガーストライキを行った。
丸一日、水すら口にしないサラを見て、担当者が上司に状況を報告した結果、
デイヴィッドが藍吹伊通り一丁目を去った為、サラは外務省から
「サラ、まずは身体を鍛えろ。子種を欲しがっているくせにすぐに気絶するようじゃ話にならん」
侍女の通訳を聞いて、サラが頷いた。
サラは今後、
ちなみに、GoolGoalの内部告発は、サラが信頼している部下へ働きかけたものであり、
該当の役員や従業員達は、近いうちに藍吹伊通り一丁目で勤務する事が内定している。
「ゴム、イラナイ」
「それはお前が決める事じゃない」
サラの頭に手刀を入れ、伊吹が準備運動を続けた。
道場での鍛錬を終え、胴着からジャージへと着替えた伊吹はジムへと移動する。ルームランナーやエアロバイクなど、伊吹が希望したものが複数並べられている。
ここは藍吹伊通り一丁目で勤務する女性にも開放されており、皆が口々に伊吹へ挨拶をしている。
「ツカレタ、ベッド、イク?」
「僕はまだ疲れてないよ」
同じく着替えたサラが伊吹に纏わりつくが、伊吹は素っ気ない態度でルームランナーの上に乗る。
「そうだなぁ、僕より長く走り続けたらお願いを聞いてあげるよ」
「ワカッタ、ヤクソク」
サラは伊吹の隣のルームランナーに乗り、侍女に使い方を教えてもらいながら走り始める。
しかし、二分もしないうちに躓いてルームランナーから弾き飛ばされた。
伊吹が特にサラに声を掛けなかった為、サラは再びルームランナーで走り始めるが、普段から運動などしていないサラにとっては体力的に厳しい状態だ。
何度も倒れ、何度も弾き飛ばされ、それでも走ろうとするサラ。さすがにこれ以上はやり過ぎか、と伊吹が思い、サラに声を掛ける。
「今日はもう終わりにしよう。サラにやる気があるのは分かった。
これから毎日少しずつ運動して、体力をつけるように」
「……ベッド、ベッド」
「そんなフラフラの身体で耐えられる訳ないだろう?
僕はシャワーで汗を流してくるから、疲れがマシになったら部屋に帰るんだな」
伊吹がジムを出ようとすると、サラが四つん這いになりながら後を着いて来た。仕方なく、伊吹が侍女へサラに肩を貸してやるようにお願いした。
「シャワー、イク……」
伊吹はジムに併設されているシャワールームへ行き、手早く身体を洗う。侍女が手伝いを申し出たが、この程度なら自分で出来るからと伊吹は断った。
サラは立っていられず、床にへたり込んだ状態で侍女達に身体を洗われている。
「自分でシャワーも浴びれないのに寝室に呼ばれる訳ないだろ。侍女さん達に感謝するんだな。
明日からは一人でやるんだぞ」
「Oh , Japanese ジラシ play?」
「何でそんな日本語知ってるんだよ」
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