Ｖから始める男女比一対三万世界の配信者生活：オタク文化で並行世界を制覇する！

副社長の生配信：今後の活動について

　白い狩衣姿で黒子の様に顔を隠したVividColors（ヴィヴィッドカラーズ）副社長と、その隣には髪色がシルバーブロンド、目の色が金色の白人女性が立っている。

　二人の頭上には日本語と英語で「VividColorsの今後の活動について」と字幕が表示されている。

　この映像はYourTunes（ユアチューンズ）と「なぎなみ動画」に同時に生配信されており、合計で七千万人近くの視聴者が見守っている。

『おはようございます。日本の東京は現在、朝です』

　副社長が喋るのと同時に、白人女性が英語で通訳をしている。

『この生配信は「なぎなみ動画」とYourTunesの同時に配信しております。

　今日、私が緊急で生配信をしておりますのは、現在行われているアメリカのホワイトハウスの記者会見について、思うところがあった為です』

　この時点でYourTunesのサーバは過度なアクセスの集中による負担に耐え切れず、完全に沈黙してしまう。

『大統領報道官は仰いました。VividColorsが得た収益は、アメリカ合衆国の知識と技術と資本のお陰であると。

　それは理解出来ます。私どもも配信の中で何度も申し上げました。他人様のお庭をお借りして遊ばせて頂いているに過ぎない、と。

　しかし、私どもが得た収益はYourTunesの取り分が差し引かれており、場所代はお支払いしているものと認識しており、私どもとしては何ら恥じる事のない正当な報酬であると思っております。

　まるで私どもがYourTunesが用意したサービスにただ乗りして収益を得ているかのような発言については看過出来ません。

　また、YourTunesはアメリカの領土内であり、本来であれば投稿する動画も生配信においても、英語で話すべきであるというとんでもない要求を突き付けられました。

　それならば何故、アメリカ国内に留まらず、世界中に向けてサービス提供をされているのでしょうか。

　また、アメリカ国内には英語を話さずに日常生活を送っておられる少数民族や外国人街なども多数おられると思いますが、彼らの事をどうお考えなのでしょうか。

　我が国のサービスを使うのなら英語で話し、英語で伝えろ。

　大統領報道官がそう仰るのであれば、私どもはYourTunesのアカウントを削除し、今後利用しない事をここに宣言致します。ひとまず全ての投稿済み動画を非公開とする作業を現在行っております。

　また、YoungNatter（ヤンナッター）につきましてもアメリカ企業の提供されているサービスである為、同じくアカウントを削除致します。

　VividColorsではYoungNatterに代わる新しいSNSの開発を開始致します。

　現在使用しているパソコンのOSに関しましても、アメリカ企業の提供されているプログラムでありますが、これについてはすぐに全てを変更する事は大変難しく、すぐに同等のものを国産で用意するのに時間が掛かります。

　つきましては、VividColorsが新たな国産OSを開発するまで、生配信や新たな動画の提供を一時的に停止させて頂きます。

　可能な限り早く再開出来るよう務めて参りますので、視聴者の皆様にはどうかご理解をお願いしたいと思っております。

　また、国内の企業で新たな国産OSの開発に手を貸して下さる方は、VividColorsまでご連絡をお願い致します。

　そして、今後の「なぎなみ動画」の提供についてなのですが、非常に残念ながら、アメリカ国内からは完全に撤退をさせて頂きます。

　アメリカ政府の政治的な一存で、国境を越えた事業展開が阻害される恐れがある為、収益性が極めて不透明であると言わざるを得ません。

　ただし、突然サービス提供を中止にするのは私どもも心苦しい為、撤退時期はひと月後とさせて頂きます。

　アメリカ合衆国からの利用登録はとても多く、有料登録者も他国に比べて多かったので、今後の事業展開を非常に楽しみにしておりました。

　また、「月明りの使者」のワールドツアーを開催し、現地の皆様と直接お会い出来るような形でライブを行えないかと企画を立ち上げた矢先でありました。

　ワールドツアーに関しましては、アメリカだけでなく全世界での公演について、一から計画を練り直す予定です。

　最後に、VividColorsを応援して下さっていたアメリカの視聴者の皆さん。ご期待に沿えない形でのサービス提供終了のお知らせとなってしまいました事、大変残念に思っております。

　次はいつ皆様のお目にかかれるかは分かりませんが、またお会い出来ると信じ、私どもは活動を続けて参ります。

　今まで応援して頂きまして、誠にありがとうございました。とても楽しかったです。

　私からは以上です』

　VividColorsの生配信終了直後から、アメリカ各地で反政府デモが発生。

　大統領報道官の解任の要求、VividColorsへの謝罪と和解の要求などを求めて多くの女性がデモに参加した。

　『Yes , VividColors . No , Alphadeal .』のプラカードを掲げた若者がAlphadeal本社前に集合するなど、一時州軍が治安維持の為に出動するなどの事態となった。

　軍隊を出動させた知事への批判へと発展し、混乱はアメリカ全土へ波及していった。

　YourTunesでの副社長の生配信の視聴者は、サーバが落ちるほどの数ではなかった。副社長の生配信を見たいと思う女性はすでに「なぎなみ動画」の会員登録を済ませているからだ。

　YourTunesのサーバが落ちたのは世界各国からのサイバー攻撃が主な原因であり、デモは連合国の息の掛かった人間が状況を煽って扇動していたのだが、現地の女性達は自らの行動に一切の疑問を抱かず、悪はAlphadealでありアメリカ政府であると信じている。

　この日、アメリカ政府は大統領報道官を解任。

　大日本皇国ハワイ県真珠湾より太平洋艦隊がアメリカ西海岸へ向かって展開中であるとの情報を皮切りに、イギリス・スペインからも艦隊が展開されているという情報がホワイトハウスへ上げられ、大統領は認識の甘さをようやく実感する事となった。