コスプレイヤーマチルダ
メアリーはもちろんの事、マチルダもビルへは出入り自由とし、マチルダが望んた為配信部屋として空いていた一部屋を与えた。
それからはマチルダは寝起き以外をビル内で過ごす事になった。身体がまだ成長しきっていないからか、夜は起きていられない。本人はずっと伊吹のそばにいたがったが、伊吹はマチルダの成長しきった身体を楽しみにしていると伝えると、しぶしぶ家に帰るようになった。
「イブイブ! どう? 似合うやろ!!」
伊吹がオフィスで打ち合わせをしていると、白い狩衣姿のマチルダが入って来て、その場でくるくると回ってみせる。
「おぉ、いいじゃん。うちの侍女さんが縫ってくれたの?」
「そう! 副社長みたいなん欲しいって言うたらちゃちゃっと縫ってくれたで!」
バリバリの関西弁を喋りながらはしゃいでいるマチルダに、打ち合わせをしていた
「あー、マチルダ。この世界では関西弁があんまメジャーじゃないから、僕以外の人がいる時は標準語使ってくれない?」
「んー、まぁイブイブの頼みやったらしゃあないな。
んんっ、イブイブのお願いなら仕方ないでござるな、ドュフフ。
これで良き?」
良くはないが、意図は伝わっているので伊吹はそれ以上ツッコまない事にした。
「やっぱりうちの侍女さんは良い仕事するなぁ。ありがとうございます」
マチルダ付きの侍女達が恐縮するが、こういうのはしっかりと声に出して伝えないとならない。
「なぁ、副社長と一緒に写真撮りたいねん、のだけど、よろし?」
伊吹はコスプレ文化にあまり詳しくないが、同じ世界観のコスプレをしている者同士で撮影する事があると聞いた事がある。
「そそ、
乃絵流と美羽が二人のやり取りを見守っている事に気付く伊吹。あまり改まれるのは好きではないし、マチルダほどとは言わずとも、もう少し気安く話すきっかけになるかもと、了承する事にした。
「いいよ、じゃあどこか空いてる部屋を撮影スタジオにしてしまおう。
「かしこまりました」
「え、写メでパシャっとじゃダメなん?」
伊吹は身内のお楽しみで留めるつもりはない。大々的にコスプレ文化を発展させるべく、マチルダへ向き直る。
「マチルダにはこの世界でのコスプレイヤーの第一人者になってほしい。
まずは副社長姿の僕と一緒に撮った写真をバズらせる。そこからフリフリのドレスを着てもいいし、前の世界のキャラコスでもいい。
何でも自分が好きだと思う、可愛い、キレイ、カッコイイと思うコスプレをして、写真を公開していかないか?」
「えっ、てことは第一の少女にも第二の少女にもなれるって事!?」
「いや、どっちかって言うとメガネの新キャラの方じゃない? 中身十歳じゃないんだし」
などのやり取りを経てその日は一旦お開きに。琥珀がVCスタジオにカメラやストロボなどの撮影機材とカメラマン等を集めている間に、伊吹の侍女達が集まってマチルダと河本と美羽の衣装を縫っていく。
当初は尻込みしていた河本と美羽だが、これも伊吹の意思であるとマチルダが説得し、採寸を受け入れた。
基本的に採寸と仮縫い後の試着、完成後の調整しか手を取られず、河本と美羽の本業に支障は出ないのも大きかった。
「ほら多恵ちゃんちょー似合ってんじゃん!」
「わ、私は乃絵流。お兄様の妹で……」
「それは乃絵流コスしてる時だけでいいの。ほら、美羽ちゃんもめっちゃきゃわたん!」
「お兄様、褒めて下さるかしら……」
「もちろんよ! これでダメだって言ったらうちがビンタしてあげるから!」
はたから見ると十歳の女の子にやいやい言われている二十代女性二人という事になるが、二人はマチルダの事情を知っており、前世の歳を合わせれば年上である事もあって、良い関係が築けている。
そうして諸々の準備が整い、コスプレ写真の撮影会が始まった。
「まずは副社長と併せで撮って! イブイブはドット絵お面のままで、うちはこのドット絵から半分顔がひょっこりしてる状態で撮ってもらうから」
伊吹はマチルダに指示されるままポーズを取り、パシャパシャとシャッターが切られる。
マチルダには化粧が施されており、少女の顔立ちではなくもっと中性的な顔立ちに見える。
出来上がった写真を見て、伊吹がふと思いついた事を口にする。
「マチルダ、
これだけしっかりと化粧がされていれば、日常生活でそう支障が出る事はないだろうと伊吹は考えたが、そもそもマチルダは
マチルダは二つ返事で了承した。
多恵子と美羽は社外での打ち合わせなどで顔を出す必要があるので、撮ったコスプレ写真を公開する事は見送りとなった。
公式が安藤家の妹を正式にデビューさせる事で、安藤子猫達がどのような解釈が正しいのか大きく混乱する事になるのだが、それはまた別のお話。
★★★ ★★★ ★★★
ここまでお読み頂きありがとうございます。
今までずっと河本河本と表記しておりましたがこの機会に多恵子へと表記を変更致します。
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